電験三種 R1年 理論 問11 問題と解説

 問 題     

次の文章は、太陽電池に関する記述である。

太陽光のエネルギーを電気エネルギーに直接変換するものとして、半導体を用いた太陽電池がある。p形半導体とn形半導体によるpn接合を用いているため、構造としては( ア )と同じである。

太陽電池に太陽光を照射すると、半導体の中で負の電気をもつ電子と正の電気をもつ( イ )が対になって生成され、電子はn形半導体の側に、( イ )はp形半導体の側に、それぞれ引き寄せられる。

その結果、p形半導体に付けられた電極がプラス極、n形半導体に付けられた電極がマイナス極となるように起電力が生じる。

両電極間に負荷抵抗を接続すると太陽電池から取り出された電力が負荷抵抗で消費される。その結果、負荷抵抗を接続する前に比べて太陽電池の温度は( ウ )。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •   (ア)     (イ)    (ウ)
  1. ダイオード   正孔    低くなる
  2. ダイオード   正孔    高くなる
  3. トランジスタ  陽イオン  低くなる
  4. トランジスタ  正孔    高くなる
  5. トランジスタ  陽イオン  高くなる

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

( ア )の選択肢には「ダイオード」と「トランジスタ」があります。

ダイオードは交流を直流に変換する(電流の向きを一方通行にする)ための半導体デバイスで、p形半導体とn形半導体とを接合した(くっつけた)構造をしています。このことをpn接合と呼びます。

一方のトランジスタは、電流のターンオン・ターンオフ制御や電流の増幅のために用いられる半導体デバイスです。その構造は、n形半導体とp形半導体を3つ使って、3層に重ね合わせた構成をなっています(npn形またはpnp形)。

よって、太陽電池はpn接合であることから、構造としてはダイオードと同様となるので、( ア )には「ダイオード」が入ります。

( イ )について、負の電気をもつ「電子(自由電子)」と対になる言葉は、正の電気をもつ「正孔(ホール)」です。

自由電子とは、電流が流れる元となる物質のことで、負の電気として扱われます。一方、正孔とは、自由電子が足りてない部分のことで、負の電気である電子がなくて穴のようになっているので、正孔と呼ばれていています。

p形半導体は正孔があり電子が不足していて、n形半導体は自由電子が豊富であるため、この2つがくっついている場合には、n形半導体のもつ自由電子がp形半導体の正孔へと流れるため、電流の向きはp形半導体からn形半導体へ向かう方向となります(電子と電流は反対向き)。

pn接合をもつ半導体を用いた太陽電池では、そのpn接合部に光を照射すると、電子と正孔が発生してそれらがpn接合部で分けられ、電子がn形、正孔がp形のそれぞれの電極に集まります。その結果、電子と正孔との偏りによって起電力が生じることで、電池として成立します。

よって、( イ )には「正孔」が入ります。

( ウ )に関して、太陽電池は上記のように太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変えることができますが、電気エネルギーはいつまでも蓄電できるわけではないので、徐々に熱エネルギーに変換されていきます。そのため、負荷抵抗を接続しないと太陽電池は熱くなっていきます。

しかし、負荷抵抗を接続することで、生産した電気エネルギーを負荷側に流して消費することができるので、熱エネルギーに変換されずに済みます。つまり、負荷抵抗の接続前後で比べると、接続後のほうが太陽電池の温度は低くなります。

よって、( ウ )には「低くなる」が入ります。

以上から、正解は(1)となります。

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