電験三種 R1年 機械 問10 問題と解説

 問 題     

次の文章は、単相サイリスタ整流回路に関する記述である。

図1には純抵抗負荷に接続された単相サイリスタ整流回路を示し、T1~T4のサイリスタはオン電圧降下を無視できるものとする。また、図1中の矢印の方向を正とした交流電源の電圧v=Vsinωt[V]及び直流側電圧vdの波形をそれぞれ破線及び実線で図2に示す。

図2に示した交流電圧の位相において、π<ωt<2πの位相で同時にオン信号を与えるサイリスタは( ア )である。

交流電圧1サイクルの中で、例えばサイリスタT4からT2へ導通するサイリスタが換わる動作を考える。T4がオンしている状態から位相πで、電流が零になると、T4はオフ状態となる。その後、制御遅れ角αを経てT2にオン信号を与えると、電流がT2に流れる。

このとき既に電流が零になったT4には、交流電圧vが( イ )として印加される。すなわち、( ウ )であるサイリスタは、極性が変わる交流電圧を利用してターンオフすることができる。

次に交流電圧と直流側電圧の関係について考える。サイリスタT2とT3がオンしている期間は交流電源の( エ )と直流回路のN母線が同じ電位になるので、このときの直流側電圧vdは( オ )と等しくなる。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

( ア )に関して、問題文より交流電源の電圧vは図2の破線で表されるとのことなので、0<ωt<πでvは正となり、π<ωt<2πでvは負となることがわかります。

正のときには図1のvは矢印の向き(下から上)となるので、電流は下図のように流れます。よって、このときにオン信号を与えるサイリスタはT1とT4となります。

負のときには図1のvは矢印とは反対向き(上から下)となるので、電流は下図のように流れます。よって、このときにオン信号を与えるサイリスタはT2とT3となります。

以上から、( ア )には「T2とT3」が入ります。

( イ )には「順電圧」か「逆電圧」が入りますが、サイリスタに順電圧が掛かると電流が流れてしまいます。ここでの条件ではT4を流れる電流が0という話なので、( イ )には「逆起電力」を入れるのが適切です。

( ウ )に関して、図2のω=αやω=π+αのところを見ると、急にvdが立ち上がっていることがわかります。これは、ターンオンしたということを示しています。

一方、vdが急に0になることはなく、なだらかに下がっていった結果としてω=πやω=2πのところで0になっています。つまり、サイリスタはターンオフできないということを示しています。

よって、( ウ )には「オン制御デバイス」を入れるのが正しいと判断できます。

( エ )に関して、( ア )の解説で示した図のうち、T2とT3がオンになっているときの図をもう一度載せておきます。

これを見ると、A端子とN母線の間にはサイリスタしかないので(電源や負荷がないので)、これらは同じ電位となります。また、B端子とP母線の間にもサイリスタしかなく、これらも同電位です。

よって、( エ )には「A端子」が入ります。

また、同じく上で示した回路図において、赤矢印で示した電流に対して、交流電源vは反対向きで、直流側電圧vdは電流と同じ向きになっています。つまり、vとvdは反対向きとなっていることがわかります。

よって、( オ )には「交流電圧の逆方向電圧-v」が入ります。

以上から、正解は(3)となります。

コメント