問 題
変圧器の試験方法の一つに温度上昇試験がある。小形変圧器の場合には実負荷法を用いるが、電力用等の大形変圧器では返還負荷法を用いる。返還負荷法では、外部電源から鉄損と銅損に相当する電力のみを供給すればよいので試験電源が比較的小規模なものですむ。
単相変圧器におけるこの試験の結線方法及び図中に示す鉄損、銅損の供給方法として、次の(1)~(5)のうちから正しいものを一つ選べ。ただし、T1、T2は試験対象となる同じ仕様の変圧器、T3は補助変圧器である。
解 説
各選択肢を見ると、どれも電源に接続されているほう(一次側)が鉄損供給であり、二次側が銅損供給となっています。違うのはその接続方法で、接続方法には次の3パターンが描かれています。
- 並列接続 :(1)の一次側や(4)の二次側など
- 同じ向きの直列接続:(3)の二次側や(5)の二次側
- 反対向きの直列接続:(2)の二次側や(3)の一次側など
特に直列接続は向きによって2パターンあることに注意してください。
(3)の二次側を見ると、銅損供給を示す矢印は2つの変圧器の「・」が付いている側から入っていることがわかります。一方、(2)の二次側を見ると、銅損供給を示す矢印は上の変圧器では「・」が付いている側から入っていますが、下の変圧器だと「・」がない側から入っています。
以上を踏まえて、改めて鉄損と銅損について考えます。
鉄損は変圧器の鉄心で発生する損失であり、一次側に電圧が加わってさえいれば、負荷電流が流れていなくても生じてしまう損失です。一次側の電源電圧が2つの変圧器に等しく掛かるように、ここでは並列接続にする必要があります。
よって、鉄損のほう(一次側)は、選択肢(1)や(2)、(5)のように接続するのが適切です。
一方、銅損は負荷損ともいい、変圧器に負荷電流を流したときの巻線(銅線)で消費する電力です。負荷がなければ電力は消費されないので、無負荷時は銅損が生じません。
つまり、銅損は電流が一定になるように直列接続とする必要があります。ただし、上記の通り、その向きが問題です。これを解くためには、「無負荷時は銅損が生じない」というのがポイントです。
2つの変圧器を同じ向きに並べてしまうと、2つの電圧差の向きが同じになるので、これらは加算され、電圧差によって電流が流れます。これだと、無負荷でも電流が流れて銅損が生じてしまうことになります。
一方、2つの変圧器を反対向きにすると、2つの変圧器の電圧が打ち消し合い、無負荷時に電流が流れることはありません(問題文より、2つの変圧器は同じ仕様です)。これなら無負荷時に銅損が発生せずに済みます。
よって、銅損のほう(二次側)は、選択肢(2)のように接続するのが適切です。
以上から、正解は(2)となります。
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