電験三種 R1年 機械 問7 問題と解説

 問 題     

次の文章は、電気機器の損失に関する記述である。

a コイルの電流とコイルの抵抗によるジュール熱が( ア )であり、この損失を低減するため、コイルを構成する電線の断面積を大きくする。

交流電流が並列コイルに分かれて流れると、並列コイル間の電流不平衡からこの損失が増加する。この損失を低減するため、並列回路を構成する各コイルの鎖交磁束と抵抗値、すなわち、各コイルのインピーダンスを等しくする。

b 鉄心に交流磁束が通ると損失が発生する。その成分は( イ )と( ウ )の二つに分類される。

前者は、交流磁束によって誘導された電流が鉄心を流れてジュール熱として発生する。そこで、電気抵抗が高い強磁性材料や、表面を絶縁膜で覆った薄い鉄板を積層した積層鉄心を磁気回路に用いて、電流の経路を断つことで損失を低減する。

後者は、鉄心の磁束が磁界の履歴に依存するために発生する。この( ウ )を低減するために電磁鋼板が磁気回路に広く用いられている。

c 上記の電磁気要因の損失のほか、電動機や発電機では、回転子の運動による軸受け摩擦損や冷却ファンの空気抵抗による損失などの( エ )がある。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  • (ア)   (イ)      (ウ)      (エ)
  1. 銅損  渦電流損  ヒステリシス損   機械損
  2. 鉄損  抵抗損   ヒステリシス損   銅損
  3. 銅損  渦電流損  インダクタンス損  機械損
  4. 鉄損  機械損   ヒステリシス損   銅損
  5. 銅損  抵抗損   インダクタンス損  機械損

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

( ア )には「鉄損」か「銅損」が入りますが、これらはどちらも重要な用語なので、その意味を押さえておく必要があります。

鉄損は無負荷損ともいいます(本当は無負荷損の一種が鉄損なのですが、電験三種では大体イコールと思って問題ありません)。これは、鉄損が変圧器の鉄心で発生する損失であり、一次側に電圧が加わってさえいれば、負荷電流が流れていなくても生じてしまう損失なので、このように呼ばれています。

銅損は負荷損ともいいます(本当は負荷損の一種が銅損なのですが、ここでも大体イコールと思って大丈夫です)。これは、変圧器に負荷電流を流したときの巻線(銅線)で消費する電力なので、無負荷時は銅損が生じません。

よって、電流と抵抗によるジュール熱である( ア )は、「銅損」です。

問題文aの文章は銅損に関するものでしたが、bの文章は鉄心の損失のことが書かれているので、こちらは鉄損に関する文章です。

鉄損はさらにヒステリシス損と渦電流損に分けることができるので、選択肢と比べると、( イ )には「渦電流損」が、( ウ )には「ヒステリシス損」が入ると判断できます。

電磁気的な要因による損失は鉄損と銅損を押さえておけば充分です。それ以外には、機械部品の摩擦や空気抵抗による「機械損」があるので、( エ )にはこれが入ります。

以上から、正解は(1)です。

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