問 題
図1のように、定格電圧66kVの電源から三相変圧器を介して二次側に遮断器が接続された三相平衡系統がある。
三相変圧器は定格容量7.5MV・A、変圧比66kV/6.6kV、百分率インピーダンスが自己容量基準で9.5%である。また、三相変圧器一次側から電源側をみた百分率インピーダンスは基準容量10MV・Aで1.9%である。
過電流継電器(OCR)は変流比1000A/5Aの計器用変流器(CT)の二次側に接続されており、整定タップ電流値5A、タイムレバー位置1に整定されている。
図1のF点で三相短絡事故が発生したとき、過電流継電器の動作時間[s]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、三相変圧器二次側からF点までのインピーダンス及び負荷は無視する。また、過電流継電器の動作時間は図2の限時特性に従い、計器用変流器の磁気飽和は考慮しないものとする。
- 0.29
- 0.34
- 0.38
- 0.46
- 0.56
解 説
問われているのは過電流継電器の動作時間で、これは図2より、制定タップ電流の倍数から求めることができます。制定タップ電流値は問題文より5[A]なので、三相短絡事故時の電流の大きさがわかれば倍数を計算することができます。
よって、当面の目標は、三相短絡事故時にCTの二次側にあるOCRを流れる電流Iの大きさを求めることとなります。
ここで、CTは変流比が1000A/5Aなので、CT一次側の電流がわかれば、二次側の電流Iは比の計算によって簡単に求めることができます。CT一次側の電流というのは事故点での短絡電流Isのことです。そのため、以下ではこの短絡電流Isを求めます。
短絡電流Isを使った式としては、%Zを求める以下の式を重要公式として押さえておいてください。
- %Z:%インピーダンス [%]
- I:定格電流 [A]
- Is:短絡電流 [A]
よって、Isの値を知るためには%ZとIを求める必要があるので、まずは%Zのほうから考えます。
問題文に記載されている%Zは2つ(9.5%と1.9%)ありますが、それぞれ基準とする容量が異なっています(7.5MV・Aと10MV・A)。よって、まずはこれらの基準を合わせる必要があります。
どちらをどちらに合わせても構いませんが、今回は10[MV・A]を基準容量として計算していきます。三相変圧器の%Zを7.5[MV・A]から10[MV・A]に変換すると、以下のようになります。
よって、図1全体の%Zは、10[MV・A]を基準容量とすると次のように計算できます。ちなみに、変圧器二次側のインピーダンスは、問題文より無視できることになっています。
これで%Zの値がわかったので、続いて定格電流Iを求めます。
上記までの流れで基準容量を10[MV・A]としているので、定格電流Iを考える際にもこの条件を引き継ぎます。基準容量Pは10[MV・A]、変圧器二次側の定格電圧Vは問題文より6.6[kV]なので、定格電流Iは次のようになります。
なお、事故点は変圧器の二次側なので、定格電流や定格電圧も変圧器の二次側で考えます。つまり、定格電圧は一次側の66[kV]ではなく二次側の6.6[kV]を使います。また、三相なので下式で√3を入れ忘れないように注意してください。
以上から、%Zの値は(2)式で、Iの値は(3)式で求めることができたので、これを(1)式に代入して短絡電流Isを求めます。
これで短絡電流Isがわかり、CTの変流比は1000A/5Aなので、CT二次側の電流ICT2は次のように計算できます。
この30[A]は制定タップ電流値5[A]の6倍なので、制定タップ電流の倍数は6となります。よって、図2の横軸が6であるときの縦軸を読み取ればよいので、動作時間は3.5と4.0の間(3.8くらい)であることがわかります。
ここで、図2ではタイムレバー位置が10に整定されていますが、問われているのはタイムレバー位置が1のときの動作時間です。つまり、この条件での動作時間は、図2で読み取れる時間の10分の1となるので、0.35と0.40の間(0.38くらい)になります。
以上から、選択肢の中では(3)の0.38が妥当な数値であるので、正解は(3)であると判断できます。
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