相電圧と線間電圧、相電流と線電流

三相交流回路における3つの電源の電圧は相電圧と呼ばれます。また、そこを流れる電流のことを相電流といいます。

一方、そこから負荷側へと3本の電線が延びていますが、そのうち2本間の電圧差を線間電圧と呼び、電線に流れる電流を線電流と呼んでいます。

相電圧と線間電圧の関係、相電流と線電流の関係は、Y結線かΔ結線かで変わってきますが、どちらも重要です。以下に図で示しながら解説をしますが、ここは特に重要事項なので、ぜひしっかりと押さえておいてください。

Y結線における電圧と電流

Y結線の三相交流回路(電源側)は以下のように描くことができます。

上図において、青色で示したのが相電圧と相電流で、赤色で示したのが線間電圧と線電流となります。最初に確認しておきますが、3つの相電圧と相電流は、それぞれ大きさが同じで、位相が2π/3[rad](120°)ずつずれています。

この回路図を見てわかるように、相電流はそのまま送電線へと進んで負荷側に流れていくので、相電流と線電流はその大きさも位相も同じものとなります。

(もちろん、I線a=I相aは成り立ちますが、たとえばI線a=I相bは位相が違うので成り立ちません。)

一方、線間電圧V線間abは、相電圧V相aの√3倍の大きさで、位相はV相aよりもπ/6[rad](30°)の進みとなります。

これは暗記しておくべき内容ですが、無理に暗記に頼らずとも、ベクトル図を描いて導出することもできます。たとえば、V線間abは、上図よりV相aとV相bとの差で表すことができるので、以下のようなベクトル図が描けます。

赤矢印で示したV線間abは、三平方の定理を使うとV相aの√3倍の長さがあり、また、両者の矢印のなす角は30°となっています。よって、先ほど書いた通り、線間電圧V線間abは相電圧V相aの√3倍の大きさで、位相はπ/6[rad](30°)の進みだとわかります。

Δ結線における電圧と電流

Δ結線の三相交流回路(電源側)は以下のように描くことができます。

上図において、青色で示したのが相電圧と相電流で、赤色で示したのが線間電圧と線電流となります。この回路図を見てわかるように、今度はY結線のときと対称的に、相電圧と線間電圧が等しいことがわかります。

一方、線電流I線caは、相電流I相aの√3倍の大きさで、位相はI相aよりもπ/6[rad](30°)の遅れとなります。

これもY結線のときと対比させて覚えておきたい内容です。もし覚えきれない場合は、その都度以下のようなベクトル図を描いて導出してください。たとえば、I線caは上図よりI相aとI相cとの差で表すことができるので、以下のようなベクトル図が描けます。

赤矢印で示したI線caは、三平方の定理を使うとI相aの√3倍の長さがあり、また、両者の矢印のなす角は30°となっています。よって、先ほど書いた通り、線電流I線caは相電流I相aの√3倍の大きさで、位相はπ/6[rad](30°)の遅れだとわかります。

まとめ

  • Y結線では、線電流と相電流はその大きさも位相も等しくなります。
  • Y結線では、線間電圧は相電圧の√3倍の大きさで、位相はπ/6[rad](30°)の進みになります。
  • Δ結線では、線間電圧と相電圧はその大きさも位相も等しくなります。
  • Δ結線では、線電流は相電流の√3倍の大きさで、位相はπ/6[rad](30°)の遅れとなります。

コメント

  1. 太田実 より:

    Y接続の場合、線間電圧が相線圧の√3であることを三角関数を使って正面から証明出来ませんか?

  2. Roy より:

    線間電圧・相線圧のわかりやすい説明を求めてこのページにたどりつきました(ありがとうございます).

    考えてみました.

    三角関数に和積の公式
    sinα − sinβ = 2・cos{(α+β)/2}・sin{(α−β)/2}
    があります.

    ここで,いま位相が120°ズレていますので
    β = α-2π/3
    とおくと,

    V線間 = sinα − sin(α-2π/3) = 2・cos[{α+(α-2π/3)}/2]・sin[{α−(α-2π/3)}/2]
    = 2・cos(α-π/3)・sin(π/3)
    = 2・cos(α-π/3)・(√3)/2
    = √3cos(α-π/3)

    となります.ここで振幅だけに着目すると√3倍になります.