電圧計や電流計については電圧計、電流計、電力計のページで紹介しましたが、どの測定器でもそうであるように、電圧計や電流計には測定可能な範囲というものがあります。つまり、電圧計にあまりにも大きな電圧を掛けたり、電流計に大電流を通したりすると、計器が故障してしまいます。
そこで、現状の計器では測れないような大きな電圧や電流を測定したいときには、倍率器や分流器を使います。これらを使えば、別の電圧計などを用意しなくても、手軽に測定範囲を拡大することができます。
倍率器
ある抵抗(倍率器)を、電圧計と直列に接続した回路図を以下に示します。
上図のように、電圧計の内部抵抗がrV[Ω]で、もうひとつの抵抗Rm[Ω]が仮にrVの9倍だとします。上記回路の端子間電圧をV[V]とすると、抵抗がなければ(電圧計のみだったら)電圧計に掛かる電圧はそのままV[V]です。しかし、この抵抗があることで、電圧計の両端の電圧差は、
となります。つまり、この抵抗があるのとないのでは、電圧計に掛かる電圧が10分の1に減ることがわかります。
このように、電圧計に掛かる電圧を下げ、測定範囲を広げることを目的として電圧計と直列につなぐ抵抗が、倍率器です。
上記の説明ではわかりやすいように、電圧計の内部抵抗が1で、もうひとつの抵抗(倍率器)が9で、合わせて10だから電圧の測定範囲はもとの10倍まで拡大する…というような説明としましたが、これを一般論化して、倍率器の抵抗を一般式で表すと以下のようになります。
- Rm:倍率器の抵抗[Ω]
- m:倍率[倍]
- rV:電圧計の内部抵抗[Ω]
分流器
倍率器が電圧計の測定範囲を上げるものなら、分流器は電流計の測定範囲を上げるものです。倍率器とは対照的なので、片方をしっかり覚えておけば、他方も記憶しやすいと思います。
結論を先に書くと、電流計に流れる電流を抑え、測定範囲を広げるために電流計と並列につなぐ抵抗が、分流器です。回路図としては次のようになります。
倍率器の考え方がわかっていれば簡単だと思いますが、上図において抵抗(分流器)があることによって、本来なら電流計に端子間電流が流れるところを、電流計と分流器とでその電流を分け合うことになります。そうすることで、電流計に流れる電流が減って負担が軽くなるので、より大きな電流が測定できるようになります。
以上を式で表すと、次のようになります。
- Rs:分流器の抵抗[Ω]
- rA:電流計の内部抵抗[Ω]
- m:倍率[倍]
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