交流を直流に変換する(電流の向きを一方通行にする)ことを整流または順変換といいます。この整流のために用いるのがダイオードで、これは前項で紹介したp形半導体とn形半導体とを接合した(くっつけた)ものです。この項では、最も基本的なダイオードであるpn接合ダイオードについて解説します。
ダイオードは、回路図の中で次の記号によって表されます。
これは、電流が左側から右側へは流れるけれど、右側から左側へは流れないことを意味しています。つまり、ダイオードがあることで、本来なら双方向に電流が流れるはずの交流が、一方の向きにしか流れない直流へと変わります。回路図での記号では至って簡単な矢印のように見えますが、実際の構造は以下のようになっています。
上図のように、ダイオードはp形半導体とn形半導体とを接合した(くっつけた)構造をしています。p形半導体とn形半導体とを接合することを、そのままですがpn接合と呼び、そのダイオードをpn接合ダイオードといいます。
上図では左側がp形半導体、右側がn形半導体となっているので、これに交流電圧を掛けたときのことを考えてみます。…が、その前に、p形半導体は正孔があり電子が不足していることと、n形半導体は自由電子が豊富であることを押さえておいてください。
正孔と自由電子がある場合、自由電子は正孔へと向かって流れますが、「電流が流れる」というのは、「電子の流れることと反対向きの現象」である点も知っておかなくてはなりません。つまり、p形半導体とn形半導体がくっついている場合、n形半導体のもつ自由電子がp形半導体の正孔へと流れるため、電流の向きは、p形半導体からn形半導体へ向かう方向となります。
…という知識を一旦理解できれば、実際には電池は+から-に電流が流れるので、半導体でも同じように、p形(positive)からn形(negative)へと電流が流れる、と覚えることができます。
よって、電源が交流だったとしても、p形→n形方向へは電流が流れる一方で、n形→p形方向へはほとんど流れないので、結果として、電気回路にダイオードを設けることで交流を直流へと変換することが可能となります。
ちなみに、電圧を掛ける前のpn接合ダイオードは、n形半導体側には自由電子、p形半導体側には正孔が豊富に存在していますが、そのちょうど間には、自由電子も正孔もない層ができていて、この層のことを空乏層といいます。
自由電子も正孔もないので、電気的に絶縁された状態で、電圧が掛かっていない状態ではここに電流が流れることはありません。ただし、ダイオードを電源につなげば(電圧を掛ければ)、自由電子がn形側からp形側へ流れる過程において空乏層も通るので、絶縁状態は解消されて、p形→n形方向へと電流が流れます。
また、ダイオードは半導体を使っているので、電気回路では抵抗として振る舞います。つまり、電流が流れるとエネルギーの一部を消費して、熱エネルギーへと変換されるのが普通です。
しかし、これを熱エネルギーではなく、光エネルギーに変換させて発光するようにしたのが、LEDです。LEDは、Light Emitting Diodeの頭文字をとったもので、発光ダイオードと訳されます。
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