PID制御

前項でフィードバック制御の概要を説明しましたが、この項ではフィードバック制御の仕組みをより詳しく解説します。

フィードバック制御は、主に以下の3つの基本的な制御動作を組み合わせることで制御しています。

  • P動作(比例動作)
  • I動作(積分動作)
  • D動作(微分動作)

これらを組み合わせたものはPID制御と呼ばれます。「比例の(Proportional)」、「積分の(Integral)」、「微分の(Differential)」の頭文字を取って、このような名称が付いています。

P動作(比例動作)

PID制御の中で最も基本的な制御は、「P動作(比例動作)」です。これは、目標値と制御値(現在値)の偏差に比例した操作量を出力する制御法です。

P動作(比例動作)によって、制御値を目標値にざっくりと近づけることができますが、制御動作が働いて目標値と制御量の偏差が小さくなると操作量も小さくなるため、制御量を目標値に完全に一致させることができません。

このような目標値と制御量の偏差のことを定常偏差(オフセット)といいます。

I動作(積分動作)

定常偏差(オフセット)をなくすために用いるのが、「I動作(積分動作)」です。これは偏差の積分値に応じて操作量を出力する制御法で、上記の通り定常偏差(オフセット)をなくすのが主な目的なので、P動作とセットで使います(P動作は単独で使われることもありますが、I動作単独というのはありません)。

P動作とI動作をセットで使うとPI動作と呼ばれますが、このメリットは上記の通り定常偏差(オフセット)をなくせる点です。一方、PI動作は目標値に到達する(=定常状態)までに結構な時間が掛かることがある点がデメリットともいえます。

D動作(微分動作)

上記のPI動作のように時間が掛かることを避けたいときに有効なのが、「D動作(微分動作)」です。これは主にP動作・I動作と合わせて、PID動作として用いられます。

これは偏差の微分値に応じて操作量を変える方法ですが、目標値と制御値(現在値)との乖離が大きい場合には、操作量を大きく変えて、短時間のうちに目標値に近づけることができます。そうして目標値に近づいた上で、I動作によって定常偏差(オフセット)をなくせば目標値とぴったり一致させることができます。

この動作は偏差の起こり始めに大きな操作量を与える動作をするので、偏差を早く減衰させる効果がある一方、制御のタイミング(位相)によっては偏差を増幅し不安定になることもあります。要は、使い方によってはとても便利な一方で、扱い方がやや難しい動作であるともいえます。

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