電気分解の計算(ファラデーの法則)

一次電池のページにて、化学電池というのは物質の化学反応により放出されるエネルギーを電気エネルギーに変換すると説明しました。この項で扱う電気分解は、これの反対で、電気エネルギーを外から加えることによって化学反応を引き起こすことをいいます。

電池では正極では電子を受け取る還元反応が起こり、負極では電子を放出する酸化反応が起こりますが、電気分解だとその逆で、陽極では電子を放出する酸化反応が起こり、陰極では電子を受け取る還元反応が起こります(電気分解の場合は、陽極、陰極という言い方をします)。

ここまでが電気分解の概念的なところですが、大事なのはここからです。

金属塩の溶液を電気分解すると、陰極に純度の高い金属が析出します。この際、どれくらいの電気エネルギーを加えるとどれくらいの質量の金属が析出するのか、計算で出すことが可能です。この計算の鍵を握るのが、ファラデーの法則ファラデーの定数です。

ファラデーの法則

ファラデーの法則は、以下の2つから成る法則です。

  • 電気分解により析出する物質量は、電気量に比例する
  • 電気量が一定のとき、電気分解により析出する物質量は、価数に反比例する

上の文の意味するところは、たとえば96500[C]の電気量を流したところ、金属が1[mol]析出したとしたら、電気量を倍の193000[C]流せば析出する金属は2[mol]になる、ということです。

下の文の意味するところは、たとえば96500[C]の電気量を流したところ、1価の金属(銀など)であれば1[mol]析出しますが、析出する金属が2価(銅など)であったときには、0.5[mol]しか析出しないということです。

これは例題を使ったほうが理解しやすいと思うので、以下に例題とその解説を示します。

例題

硫酸亜鉛(ZnSO4)/硫酸系の電解液の中で陽極に亜鉛を、陰極に鋼帯の原板を用います。この両電極間に2[A]の電流を5[h]通じたとき、原板に析出する亜鉛の量[g]はいくらになるか計算してください。

ただし、亜鉛の価数は2、原子量は65.4、電流効率は65[%]、ファラデー定数Fは96500[C/mol]とします。

解説

まず、この条件で化学反応に使われる電気量がいくらかを計算します。2[A]の電流を18000[s](5時間を秒数に換算しています、5×60×60=18000)流したときの電気量[C]は、

となり、電流効率を考慮すると、

が、化学反応に使われる電気量となります。

一方、ファラデー定数Fの意味するところは、単位を見るとわかりやすいかもしれませんが、1[mol]分の電子を流すために必要な電気量が96500[C]であるということです(96500という数値は問題文で与えられることが多いので、無理に覚える必要はありません)。

つまり、今回は

の電子が流れています。

ここで、電子が0.242[mol]流れるときに亜鉛は何[mol]生成するのかというのがポイントですが、これはファラデーの法則の2つ目「電気量が一定のとき、電気分解により析出する物質量は、価数に反比例する」を使います。

亜鉛の価数は問題文にもある通り2なので、電子が0.242[mol]流れたときに析出する亜鉛の量は、

となります。よって、亜鉛が0.121[mol]析出するとわかったので、亜鉛の原子量65.4を用いると、その質量は

と計算でき、これが答えになります。


以上のように、ファラデーの法則はその文章を適切に覚えておくというよりは、比の計算をどのように行うかを押さえておくことが大切です。過去問題などを使って類題を解くことで、ぜひこの計算方法を身につけておいてください。

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