電験三種 H30年 機械 問12 問題と解説

 問 題     

次の文章は、リチウムイオン二次電池に関する記述である。

リチウムイオン二次電池は携帯用電子機器や電動工具などの電源として使われているほか、電気自動車の電源としても使われている。

リチウムイオン二次電池の正極には( ア )が用いられ、負極には( イ )が用いられている。また、電解液には( ウ )が用いられている。放電時には電解液中をリチウムイオンが( エ )へ移動する。リチウムイオン二次電池のセル当たりの電圧は( オ )V程度である。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)           (イ)      (ウ)     (エ)   (オ)

  1. リチウムを含む金属酸化物  主に黒鉛   有機電解液 負極から正極 3~4
  2. リチウムを含む金属酸化物  主に黒鉛   無機電解液 負極から正極 1~2
  3. リチウムを含む金属酸化物  主に黒鉛   有機電解液 正極から負極 1~2
  4. 主に黒鉛   リチウムを含む金属酸化物  有機電解液 負極から正極 3~4
  5. 主に黒鉛   リチウムを含む金属酸化物  無機電解液 正極から負極 1~2

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

最初に注意しておきたいのが、この問題はリチウムイオン二次電池に関する問題であるという点です。リチウム電池(金属リチウムを使った使い捨ての一次電池)ではなく、リチウムイオンを使った二次電池です。

リチウム電池(一次電池)の場合は「負極に単体の金属リチウム」を用いますが、リチウムイオン二次電池の場合は「正極にリチウムを含む金属酸化物(リチウムはイオンの形をとっている)」を使うため、ここを勘違いすると( ア )の段階から間違えることになります。

( ア )と( イ )について、( ア )は上記の通り「リチウムを含む金属酸化物」が入ります。負極には黒鉛を代表とする炭素材料が用いられるので、( イ )には「主に黒鉛」が入ります。

( ウ )に関して、選択肢にある無機電解液というのは何らかの電解質が溶けた水溶液ということです。一方、有機電解液は、有機溶剤のことを指します。ここでの大きな違いは、水があるかないかという点です。

リチウムイオン二次電池は3~4Vもの大きな電圧を取り出せることができますが、水は大きな電圧には耐えることができません。水に大きな電圧が掛かると、電気分解が起こって水素と酸素が生成します。

よって、大きな起電力を得ることができる電池の場合、水は電解液として使えないので、一般的には有機電解液を採用します(最近は水を使う方法も開発されていますが、試験対策としては有機電解液で覚えてください)。

以上から、( ウ )には「有機電解液」が入ります。

( エ )に関して、放電時には、電流が正極から流れ出て負荷を経て負極へと流れ込みます。電流の実態は電子の流れであり、電流と電子の向きは反対なので、物質としては電子(負電荷)が負極から流れ出て正極へと流れ込むということになります。

しかし、電子だけの移動だと上図の青矢印で示すように、負電荷が一方的に正極側に溜まっていってしまい、電荷のバランスが取れなくなってしまいます。そこで、緑矢印で示したように負極側の電解液中にあるリチウムイオンが陽極側へと移動することで、電荷のバランスが保たれます。

よって、放電時にリチウムイオンが移動する方向である( エ )に入るのは、「負極から正極」となります。

ちなみに、充電時にはこの反対です。つまり、電流は負極から正極に流れ、電子は正極から負極に流れるので、リチウムイオンは正極から負極へと移動します。

( オ )について、リチウムイオン二次電池は問題文にも書かれている通り、携帯用電子機器や電動工具などに広く使われています。これは、大きな電圧を効率よく安定的に得ることができるためです。

よって、( オ )には「3~4」が入ります。

ちなみに、一次電池であるリチウム電池も3Vくらいなので、それと大体一緒と覚えてしまってもよいと思います。また、一次電池のマンガン電池は1.5V、二次電池の鉛蓄電池は2Vくらいなので、リチウムを使った電池は優れた電圧を示します。

以上から、正解は(1)となります。

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