電験三種 H30年 機械 問4 問題と解説

 問 題     

三相誘導電動機の始動においては、十分な始動トルクを確保し、始動電流は抑制し、かつ定常運転時の特性を損なわないように適切な方法を選定することが必要である。

次の文章はその選定のために一般に考慮される特徴の幾つかを述べたものである。誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 全電圧始動法は、直入れ始動法とも呼ばれ、かご形誘導電動機において電動機の出力が電源系統の容量に対して十分小さい場合に用いられる。始動電流は定格電流の数倍程度の値となる。
  2. 二重かご形誘導電動機は、回転子に二重のかご形導体を設けたものであり、始動時には電流が外側導体に偏り始動特性が改善されるので、普通かご形誘導電動機と比較して大きな容量まで全電圧始動法を用いることができる。
  3. Y-Δ始動法は、一次巻線を始動時のみY結線とすることにより始動電流を抑制する方法であり、定格出力が5~15kW程度のかご形誘導電動機に用いられる。始動トルクはΔ結線における始動時の倍となる。
  4. 始動補償器法は、三相単巻変圧器を用い、使用する変圧器のタップを切り換えることによって低電圧で始動し運転時には全電圧を加える方法であり、定格出力が15kW程度より大きなかご形誘導電動機に用いられる。
  5. 巻線形誘導電動機の始動においては、始動抵抗器を用いて始動時に二次抵抗を大きくすることにより始動電流を抑制しながら始動トルクを増大させる方法がある。これは誘導電動機のトルクの比例推移を利用したものである。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(3)に関連して、定格出力が5~15[kW]程度の中容量のときは、Y-Δ始動という方法を使います。この方法は、まず最初に固定子巻線をY結線にして電源電圧を加えて加速し、続いて、回転子の回転速度が定格回転速度に近づいたら、そこで固定子巻線をΔ結線に切り替えるという方法です。

つまり、始動時はY結線、通常運転時はΔ結線にコイルの接続を切り替えるというやり方です。こうすることで、最初からΔ結線のまま始動してしまう場合と比較して、始動電流も始動トルクも3分の1倍になります。始動トルクが下がることはデメリットといえますが、始動電流が下がるメリットが大きいので、これは有用な始動方法です。

ここで(3)の記述を見ると、始動トルクの倍率が「1/√3倍」と書かれています。これは誤りで、正しくは「1/3倍」なので、(3)が正解となります。

…というのも、Y結線にするかΔ結線にするかで電流は以下のように変わるからです。トルクは電流に比例するので、電流が1/3になればトルクも1/3となります。


(3)以外の選択肢はいずれも正しい記述ですが、三相誘導電動機の始動についてよくまとまっているので、これらの内容も併せて押さえておいてください。

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