電験三種 H30年 機械 問3 問題と解説

 問 題     

定格出力11.0kW、定格電圧220Vの三相かご形誘導電動機が定トルク負荷に接続されており、定格電圧かつ定格負荷において滑り3.0%で運転されていたが、電源電圧が低下し滑りが6.0%で一定となった。滑りが一定となったときの負荷トルクは定格電圧のときと同じであった。

このとき、二次電流の値は定格電圧のときの何倍となるか。最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、電源周波数は定格値で一定とする。

  1. 0.50
  2. 0.97
  3. 1.03
  4. 1.41
  5. 2.00

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

この問題は問題文に様々な種類のパラメータと値が与えられていますが、実は全てを使うわけではありません。多くの問題では与えられた数値は全部使う必要があるので、このような例は珍しいです。

だからといって、解法のアプローチが変わるわけではありません。どのような出題の仕方であっても、問われているパラメータを起点として、それに関連する重要式を思い出すというのが良いアプローチ方法だと思います。

今回は二次電流の比が問われていますが、条件が変わった前後でトルクが不変だというのもポイントになりそうです。つまり、電流とトルクをつなぐ式がないかどうかを考えます。

トルクを含む式で特に重要なのが、以下の式です。

  • P2:二次入力[W]
  • ω:角速度[rad/s]
  • T:トルク[N・m]

上式ではまだ電流が登場しませんが、電力(二次入力)と電流をつなぐのは簡単です。つまり、抵抗Rを用いた以下の式を用います(係数の3は、三相の3です)。

(1)式と(2)式を組み合わせることで、電流とトルクをつなぐ式ができます。

条件が変わった前後でトルクは変わらないので、(3)式の右辺にそれぞれの条件を代入しても等式が成立します。

よって、この問題を解く方針としては、(4)式のRbeforeとRafterを求めて、そこから問われている電流比を計算します。


三相誘導電動機の1相当たりの等価回路は変圧器の等価回路と同じように描くことができます。

今回は二次電流の値についての話なので、二次側に注目します。二次抵抗Rは上図の青色点線内の2つ抵抗の和になるので、以下のように計算できます。

よって、これを(4)式に代入すると、

となります。

あとは問題文で与えられた数値を代入し、式を整理すれば、求める答えが得られます。

以上より、正解は(4)です。

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