電験三種 H30年 電力 問9 問題と解説

 問 題     

次の文章は、架空送電線の多導体方式に関する記述である。

送電線において、1相に複数の電線を( ア )を用いて適度な間隔に配置したものを多導体と呼び、主に超高圧以上の送電線に用いられる。多導体を用いることで、電線表面の電位の傾きが( イ )なるので、コロナ開始電圧が( ウ )なり、送電線のコロナ損失、雑音障害を抑制することができる。

多導体は合計断面積が等しい単導体と比較すると、表皮効果が( エ )。また、送電線の( オ )が減少するため、送電容量が増加し系統安定度の向上につながる。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

     (ア)    (イ)  (ウ)  (エ)   (オ)

  1. スペーサ    大きく 低く 大きい インダクタンス
  2. スペーサ    小さく 高く 小さい 静電容量
  3. シールドリング 大きく 高く 大きい インダクタンス
  4. スペーサ    小さく 高く 小さい インダクタンス
  5. シールドリング 小さく 低く 大きい 静電容量

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

「複数の電線を( ア )を用いて適度な間隔に配置」という文章から、ここには距離を取るための装置が入ることがわかります。よって、( ア )には「スペーサ」が入ります。

スペーサとは、多導体方式において、負荷電流による電磁吸引力や強風などによる電線相互の接近・衝突を防止するために用いられる装置です。

( イ )と( ウ )について、この文章ではコロナ放電の発生を抑制について書かれています。電線表面の電位差が大きくなると放電しやすくなり、また、コロナ開始電圧が低いと簡単にコロナ放電が起こる条件を満たしてしまいます。

このようなことを防ぐために多導体方式を用いているので、( イ )には「小さく」を、( ウ )には「高く」を入れるのが適切であるとわかります。

( エ )のところで、表皮効果とは、電流密度が導体の表面で高くなり、表面から離れるにつれ低くなっていく現象です。1本の太い導体だと表皮効果が顕著に現れ、導体の抵抗が高くなってしまいます。しかし、多導体であれば電流がうまく分散させることができるので、表皮効果を抑え、抵抗をあまり上げずに済みます。

よって、( エ )には「小さい」が入ります。

最後の( オ )ですが、多導体方式を用いることでインダクタンスが下がり、静電容量は上がります。これによって、送電容量が上がり、安定度も増します。( オ )の直後に「減少」とあるので、ここには「インダクタンス」を入れるのが正しいです。

以上から、正解は(4)となります。

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