問 題
図のように、線間電圧V[V]、周波数f[Hz]の対称三相交流電源に、R[Ω]の抵抗とインダクタンスL[H]のコイルからなる三相平衡負荷を接続した交流回路がある。この回路には、スイッチSを介して、負荷に静電容量C[F]の三相平衡コンデンサを接続することができる。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) スイッチSを開いた状態において、V=200V、f=50Hz、R=5Ω、L=5mHのとき、三相負荷全体の有効電力の値[W]と力率の値の組合せとして、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
有効電力 力率
- 2.29×103 0.50
- 7.28×103 0.71
- 7.28×103 0.95
- 2.18×104 0.71
- 2.18×104 0.95
(b) スイッチSを閉じてコンデンサを接続したとき、電源からみた負荷側の力率が1になった。このとき、静電容量Cの値[F]を示す式として、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし、角周波数をω[rad/s]とする。
解 説
(a)
(a)ではスイッチSを開いているので、右側のΔ結線のほうは考えません。
問題の図の三相回路ですが、これを1相あたりの等価回路に描き直すと、以下のような回路が描けます。
ちなみに、三相回路の線間電圧に対し、等価回路の電圧(相電圧)はその√3分の1になります。
また、コイルのリアクタンスXは、次の計算によって求められるので、RとXを合成したインピーダンスZは、以下のようになります。
この段階で、有効電力の前に力率cosθを計算することができます。その理由は、力率とは皮相電力に対する有効電力の割合のことですが、これは、インピーダンスZに対する抵抗Rの割合が全く一緒だからです。
続いて、有効電力P=I2Rなので、まずは上記の等価回路を流れる電流Iを計算します。
よって、この等価回路の有効電力Pは以下のようになります。
ここで求めたPは1相あたりの等価回路の有効電力です。問われているのは三相回路の有効電力なので、これを3倍しなければなりません。
以上から、(a)の正解は(3)とわかります。
(b)
抵抗とコイル側はY結線、コンデンサ側はΔ結線と異なっています。このままでは考えづらいので、こういう場合はΔ結線をY結線に変換して、どちらもY結線にして統一すると計算しやすくなります(Δ結線に統一するやり方もありますが、Δ結線は中性点が存在せず1相あたりの等価回路が描きづらいので、おすすめしません)。
Δ結線の負荷をY結線へと変換した場合、変換後のインピーダンスZYは変換前のインピーダンスZΔの3分の1倍になります(!重要事項!)。
よって、問題の回路図から1相あたりの等価回路を描いた場合、次のようになります。
上図において、電源を流れる電流をI、抵抗とコイル側を流れる電流をI1、コンデンサ側を流れる電流をI2とすると、Iは以下のように表すことができます。
ここで、電源からみた負荷側の力率が1なので、電源を流れる電流は実数部のみで、虚数部の項は係数が0になるはずです。
よって、
と計算することで、求めるCを導出することができます。
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