電験三種 H29年 電力 問7 問題と解説

 問 題     

次の文章は、変圧器のY‐Y結線方式の特徴に関する記述である。

一般に、変圧器のY‐Y結線は、一次、二次側の中性点を接地でき、1線地絡などの故障に伴い発生する( ア )の抑制、電線路及び機器の絶縁レベルの低減、地絡故障時の( イ )の確実な動作による電線路や機器の保護等、多くの利点がある。

一方、相電圧は( ウ )を含むひずみ波形となるため、中性点を接地すると、( ウ )電流が線路の静電容量を介して大地に流れることから、通信線への( エ )障害の原因となる等の欠点がある。このため、( オ )による三次巻線を設けて、これらの欠点を解消する必要がある。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)   (イ)    (ウ)   (エ)   (オ)

  1. 異常電流 避雷器   第二調波 静電誘導 Δ結線
  2. 異常電圧 保護リレー 第三調波 電磁誘導 Y結線
  3. 異常電圧 保護リレー 第三調波 電磁誘導 Δ結線
  4. 異常電圧 避雷器   第三調波 電磁誘導 Δ結線
  5. 異常電流 保護リレー 第二調波 静電誘導 Y結線

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

三相変圧器には、結線の仕方によってΔ結線とY結線があります(単相変圧器を組み合わせればV結線も使えますが、あまり一般的ではないので割愛します)。

変圧器は一次側と二次側の組合せで成り立つので、結線方式はΔ-Δ、Y-Y、Δ-Y、Y-Δの4パターンがあることになります(本当はY-YではなくY-Y-Δなのですが、それについては後述)。

Δ結線は第三高調波電流をΔ巻線内に循環させるので、通信障害が少ないというメリットがあります。第三高調波とは基本周波数の3倍の周波数を持つ高調波で、電磁誘導障害を起こす原因となります。つまり、Δ結線を使えば機器への悪影響が少なくて済む、ということです。

一方、Y結線は第三高調波の悪影響を避けられない代わりに、中性点接地ができるという特徴があります。中性点で接地することで、地絡故障時などの異常電圧を抑制したり、保護継電器(保護リレー)で異常電流を検出して機器を保護したりすることができます。


Δ結線とY結線について以上の違いを踏まえた上で、問題文のY-Y結線方式について考えていきます。

まず、( ア )には上記の説明文の通り、「異常電圧」が入ります。Y結線は相間電圧が線間電圧の1/√3なので電圧の異常上昇が抑えやすい…と覚えておくとよいかもしれません。

( イ )に関して、短絡故障や地絡故障による異常電流から保護するためには保護継電器(保護リレー)を使うので、「保護リレー」が入ります。避雷器は雷による一時的な異常高電圧から保護するためのものです。

( ウ )もすでに冒頭で説明済みですが、「第三調波」が入ります。第三調波または第三高調波というように、用語の名称が微妙に変わって出題されるかもしれませんが、どちらも同じものです。また、電験三種の試験においては「第三」だけ覚えておけば大丈夫です。第二調波や第n調波という言葉が選択肢にあっても、それを選ぶ必要はほぼないと思います。

( エ )は通信障害の原因ですが、これは上記の通り「電磁誘導」による障害です。重要知識として押さえておいてください。

( オ )について、変圧器のY-Y結線は第三高調波の悪影響(通信障害)を避けられませんが、Δ結線があればこれを回避できます。そのため、変圧器の一次側と二次側の両方ともY結線にする場合は、それにΔ結線をプラスすることで問題を解決しています。このような結線方式を「Y-Y-Δ結線」といいます。よって、( オ )には「Δ結線」が入ります。

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