電験三種 H29年 電力 問6 問題と解説

 問 題     

電力系統で使用される直流送電系統の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 直流送電系統は、交流送電系統のように送電線のリアクタンスなどによる発電機間の安定度の問題がないため、長距離・大容量送電に有利である。
  2. 一般に、自励式交直変換装置では、運転に伴い発生する高調波や無効電力の対策のために、フィルタや調相設備の設置が必要である。一方、他励式交直変換装置では、自己消弧形整流素子を用いるため、フィルタや調相設備の設置が不要である。
  3. 直流送電系統では、大地帰路電流による地中埋設物の電食や直流磁界に伴う地磁気測定への影響に注意を払う必要がある。
  4. 直流送電系統では、交流送電系統に比べ、事故電流を遮断器により遮断することが難しいため、事故電流の遮断に工夫が行われている。
  5. 一般に、直流送電系統の地絡事故時の電流は、交流送電系統に比べ小さいため、がいしの耐アーク性能が十分な場合、がいし装置からアークホーンを省くことができる。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

電力を発電したり消費したりするのは交流なので、直流送電を行う際には、この系統の両端に交直変換装置を設ける必要があります。これには自励式と他励式とがありますが、従来は他励式が主流でした。しかし、他励式だと運転に伴って発生する高調波や無効電力の対策のため、フィルタや調相設備の設置が必要であるのが難点です。

それに対し、最近では自励式が徐々に増えてきていて、こちらだと自己消弧形整流素子を用いることなどによって、フィルタや調相設備の設置が必要なくなります。よって、(2)の記述は「自励式」と「他励式」が反対になっているので、これが誤りの記述です。

この問題は、同様の出題がたまにあるので、正解の選択肢以外の内容についても確認しておく必要があります。選択肢にない内容も含めて、直流送電の代表的なメリットとデメリットを以下にまとめておくので、併せて押さえておいてください。

メリット

  • 絶縁が容易(実効電圧が一緒なら、交流よりも直流のほうが最高電圧が低いため)
  • 電圧降下や線路損失が小さい(直流には無効電力がないため、リアクタンスによる電圧降下がない)
  • フェランチ効果が起こらない(無効電力がないために静電容量による電圧上昇、つまりフェランチ効果が起こらない)
  • 異周波数の連系や非同期連系が簡単(直流だと同期運転がいらないため)
  • 充電電流が生じない(これが問題になる海底ケーブル送電などで有利)
  • ケーブルが安い(長距離の送電であれば、交直交換設備を設置してもトータルで安上がりになる)

デメリット

  • 変圧が容易にはできない(昇圧や降圧は交流のほうが向いている)
  • 交直交換設備の設置が必要(この設備は費用が高い)
  • 電流の遮断が難しい(一方、交流は周期的に電流が0になるので、そこで遮断しやすい)

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