電験三種 H29年 電力 問2 問題と解説

 問 題     

次の文章は、水車のキャビテーションに関する記述である。

運転中の水車の流水経路中のある点で( ア )が低下し、そのときの( イ )以下になると、その部分の水は蒸発して流水中に微細な気泡が発生する。その気泡が( ア )の高い箇所に到達すると押し潰され消滅する。このような現象をキャビテーションという。

水車にキャビテーションが発生すると、ランナやガイドベーンの壊食、効率の低下、( ウ )の増大など水車に有害な現象が現れる。

吸出し管の高さを( エ )することは、キャビテーションの防止のため有効な対策である。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

   (ア)    (イ)      (ウ)    (エ)

  1. 流速  飽和水蒸気圧  吸出し管水圧  低く
  2. 流速  最低流速    吸出し管水圧  高く
  3. 圧力  飽和水蒸気圧  吸出し管水圧  低く
  4. 圧力  最低流速    振動や騒音   高く
  5. 圧力  飽和水蒸気圧  振動や騒音   低く

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

( ア )と( イ )を含む文章には「水が蒸発して気泡となる」というようなことが書いてあります。つまり、これは水が蒸発(気化)して水蒸気になるということですが、水が水蒸気に変わる条件は、水の温度が沸点以上になるか、あるいは水の圧力が飽和水蒸気圧以下になるかのどちらかです。

温度のほうは周知の事実だと思いますが、圧力が低いと蒸発しやすくなるというのは、山の上では水の沸点が下がるということを知っていれば、納得しやすいと思います。

山頂は高さの分だけ大気圧が低くなりますが、すると水の沸点が下がり、お湯を沸かしてコーヒーやインスタントラーメンを作っても、地上と違って100℃まで加熱できないので、美味しくなくなるという事実があります(格別な場所で食べるから美味しく感じる、という可能性はありますけど…)。

…というわけで、( ア )には「圧力」、( イ )には「飽和水蒸気圧」が入るので、この時点で選択肢は(3)か(5)に絞れます。

そもそも、水の流速が変化したところで水は水のままなので、( ア )に「流速」を入れるのはおかしく、( イ )に「最低流速」を入れるのもおかしいので、消去法でも(1)、(2)、(4)は消せます。

( ウ )について、気泡が圧力で押しつぶされると、ランナなどに強い衝撃を与えるので、振動や騒音が起こるとともに、機器への損傷を与えます(気泡を押しつぶすというのは、梱包材のプチプチをつぶすイメージです。あれの強烈版だと思ってください)。よって、( ウ )には「振動や騒音」が入ります。

この時点で正解は(5)だと確定しますが、念のため、( エ )も確認しておきます。

( エ )ではキャビテーションの防止策が問われていますが、主要な対策としては以下の5つが挙げられます。どれも大事なので、この問題とは関係なくても押さえておくことをお勧めします。

  • 水車の比速度を上げすぎない
  • 吸出し管の高さを低くする
  • 吸出し管内に適度に空気を吹き込む
  • 負荷のムラをなるべくなくし、均一な運転をする
  • 壊食の起こる部位に、腐食しにくい金属素材を用いる

よって、( エ )は上記の2番目より、「低く」が入ります。

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