電験三種 H27年 機械 問13 問題と解説

 問 題     

次の文章は、電気加熱に関する記述である。

電気ストーブの発熱体として石英ガラス管に電熱線を封入したヒータがよく用いられている。この電気ストーブから室内への熱伝達は主に放射と( ア )によって行われる。また、このヒータからの放射は主に( イ )である。

一方、交番電界中に被加熱物を置くことによって被加熱物を加熱することができる。一般に物質は抵抗体、誘電体、磁性体などの性質をもち、被加熱物が誘電体の場合、交番電界中に置かれた被加熱物には交番電流が流れ、被加熱物自身が発熱することによって被加熱物が加熱される。

このとき、加熱に寄与するのは交番電流のうち交番電界( ウ )電流成分である。この原理に基づく加熱には( エ )がある。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

   (ア)   (イ)    (ウ)      (エ)

  1. 対流  赤外放射  と同相の   マイクロ波加熱
  2. 対流  赤外放射  に直交する  マイクロ波加熱
  3. 対流  可視放射  に直交する  誘導加熱
  4. 伝導  赤外放射  と同相の   誘導加熱
  5. 伝導  可視放射  と同相の   誘導加熱

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

( ア )に関して、熱の伝わり方には、伝導、対流、放射という3つのパターンがあります。伝導は固体の中での熱の移動で、対流は流体(液体や気体)の流れを伴う熱の移動、放射は電磁波による熱の移動です。今回はストーブから室内の空気中を熱が移動するので、放射ともう一つ、( ア )には「対流」が入ります。

( イ )について、ハロゲンヒーターやカーボンヒーターのような電気ストーブは、赤外線加熱を利用しています。赤外線を照射することにより、赤外線の持つ電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換して加熱する方法が赤外線放射です。よって、( イ )には「赤外放射」が入ります。

これは重要事項ではありますが、もうひとつの選択肢が「可視放射」であり、電気ストーブの熱は目に見える光線(可視光)ではないので、消去法でも簡単に判断できると思います。

( ウ )は加熱に寄与する電流が電圧と同相か位相かが問われていますが、これは回路における抵抗とリアクタンスが、それぞれ有効電力と無効電力に対応するという考え方を利用するとわかりやすいと思います。

同相なら抵抗に、直交ならリアクタンスに相当するものがあるはずですが、問題文にもある通り、抵抗体としての性質を持つ被加熱物自身が抵抗となって、電磁波エネルギーを熱エネルギーに変換しています。よって、( ウ )には「と同相の」を入れるのが適切です。

( エ )について、このような原理を用いた加熱方式を「誘電加熱」といいます。誘電加熱の中でも、特にマイクロ波を用いるものは「マイクロ波加熱」と呼ばれるので、( エ )にはこれが入ります。

マイクロ波加熱を使った具体例としては、電子レンジが挙げられます。一方、選択肢にある「誘導加熱」とは、電磁誘導を利用して渦電流損やヒステリシス損を生じさせ、これを熱として取り出すような加熱方式のことです。

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