電験三種 H27年 機械 問9 問題と解説

 問 題     

次の文章は、電力変換器の出力電圧制御に関する記述である。

商用交流電圧を入力とし同じ周波数の交流電圧を出力とする電力変換器において、可変の交流電圧を得るには( ア )を変える方法が広く用いられていて、このときに使用するパワーデバイスは( イ )が一般的である。この電力変換器は( ウ )と呼ばれる。

一方、一定の直流電圧を入力とし交流電圧を出力とする電力変換器において、可変の交流電圧を得るにはパルス状の電圧にして制御する方法が広く用いられていて、このときにオンオフ制御デバイスを使用する。デバイスの種類としては、デバイスのゲート端子に電流ではなくて、電圧を与えて駆動する( エ )を使うことが最近では一般的である。

この電力変換器はインバータと呼ばれ、基本波周波数で1サイクルの出力電圧が正又は負の多数のパルス列からなって、そのパルスの( オ )を変えて1サイクル全体で目的の電圧波形を得る制御がPWM制御である。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)     (イ)      (ウ)     (エ)  (オ)

  1. 制御角    サイリスタ 交流電力調整装置  IGBT 幅
  2. 制御角    ダイオード サイクロコンバータ IGBT 周波数
  3. 制御角    サイリスタ 交流電力調整装置  GTO  幅
  4. 転流重なり角 ダイオード 交流電力調整装置  IGBT 周波数
  5. 転流重なり角 サイリスタ サイクロコンバータ GTO  周波数

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

この問題では( ア )より先に( イ )から考えたほうがわかりやすいと思うので、ここでは順番を変えて解説します。

( イ )には「ダイオード」か「サイリスタ」が入りますが、ダイオードとは電流の向きを一方通行にする(=整流)ための装置です。よって、交流電圧を可変にしたいという今回の目的は果たせません。このようなときに使えるのは「サイリスタ」なので、( イ )にはこれが入ります。

ここで、サイリスタを使った電力変換器は次のような等価回路で表すことができます。

この回路において、本来なら下図のサインカーブと横軸との作る面積全てが電力として現れてくるのですが、下図に記入しているように制御角αを変えることによって、電力として取り出せるのが水色部分だけになります。

このように制御角αを変えることにより電圧を調整することで、必要な分の電力を得ることができます。よって、( ア )には「制御角」が入り、このような電力変換器を「交流電力調整装置」というので、これが( ウ )です。

( ア )~( ウ )を含む文章は、交流から交流への変換でしたが、( エ )と( オ )を含む文章は、直流から交流への変換であり、このような電力変換器を「インバータ」といいます。

インバータにはパワートランジスタが使われることが多いですが、その中でも「IGBT」が頻繁に用いられます。よって、( エ )には「IGBT」が入ります。これはInsulated Gate Bipolar Transistorの略で、絶縁ゲートバイポーラトランジスタと訳されます。

主な役割は電流の増幅とオン・オフ制御であり、同じくパワートランジスタである「バイポーラパワートランジスタ」と「パワーMOSFET」の2つの良いとこ取りのような性質を持つので、適用範囲が広く、使い勝手が良いです。

( オ )の前後ではPWM制御の説明をしていますが、これはPulse Width Modulationの略で、パルス幅変調制御と訳されます。その名前からもわかる通り、パルスの幅を変えることで、求める電圧波形に調整します。よって、( オ )には「幅」が入ります。

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