問 題
変圧器の鉄心に使用されている鉄心材料に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 鉄心材料は、同じ体積であれば両面を絶縁加工した薄い材料を積層することで、ヒステリシス損はほとんど変わらないが、渦電流損を低減させることができる。
- 鉄心材料は、保磁力と飽和磁束密度がともに小さく、ヒステリシス損が小さい材料が選ばれる。
- 鉄心材料に使用されるけい素鋼材は、鉄にけい素を含有させて透磁率と抵抗率とを高めた材料である。
- 鉄心材料に使用されるアモルファス合金材は、非結晶構造であり、高硬度であるが、加工性に優れず、けい素鋼材と比較して高価である。
- 鉄心材料に使用されるアモルファス合金材は、けい素鋼材と比較して透磁率と抵抗率はともに高く、鉄損が少ない。
正解 (2)
解 説
磁性材料には、磁束を通すことを目的とする「磁心材料」と、永久磁石を作る目的として使われる「磁石材料」があります。
磁心材料として使うには、ヒステリシス損を小さくするため、透磁率や抵抗率、飽和磁束密度の大きいものを選びます。また、保磁力と残留磁気は小さいほうが有利です。
一方の磁石材料は、保磁力や残留磁気の大きいものを選びます。
よって、(2)の「保磁力と飽和磁束密度がともに小さく」は、「保磁力は小さくて飽和磁束密度が大きく」のように直すべきです。
(1)について、鉄損はヒステリシス損と渦電流損の2種類から成るので、ヒステリシス損が変わらなくても渦電流損を低減されることができれば、それは良い傾向といえます。よって、これは正しい記述です。
(3)は、上記の通り、透磁率と抵抗率が高いことはヒステリシス損の低減につながるため、鉄心材料に必要な要素といえます。よって、これも正しい記述です。
(4)と(5)もどちらも正しい記述です。アモルファスは結晶構造を持たない物質で、非晶質などと呼ばれることもあります。けい素鋼と比較しても透磁率と抵抗率はともに高く、鉄損が少ないという特徴を持つ優れた材料ですが、飽和磁束密度が小さいのと、加工のしにくさ、高価であることが難点です。
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