電験三種 H26年 理論 問18 問題と解説

 問 題     

図1は、代表的なスイッチング電源回路の原理図を示している。次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 回路の説明として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. インダクタンスL[H]のコイルはスイッチSがオンのときに電磁エネルギーを蓄え、Sがオフのときに蓄えたエネルギーを放出する。
  2. ダイオードDは、スイッチSがオンのときには電流が流れず、Sがオフのときに電流が流れる。
  3. 静電容量C[F]のコンデンサは出力電圧Vo[V]を平滑化するための素子であり、静電容量C[F]が大きいほどリプル電圧が小さい。
  4. コイルのインダクタンスやコンデンサの静電容量値を小さくするためには、スイッチSがオンとオフを繰り返す周期(スイッチング周期)を長くする。
  5. スイッチの実現には、バイポーラトランジスタや電界効果トランジスタが使用できる。

(b) スイッチSがオンの間にコイルの電流Iが増加する量をΔI1[A]とし、スイッチSがオフの間にIが減少する量をΔI2[A]とすると、定常的には図2の太線に示すような電流の変化がみられ、ΔI1[A]=ΔI2[A]が成り立つ。

ここで出力電圧Vo[V]のリプルは十分小さく、出力電圧を一定とし、電流Iの増減は図2のように直線的であるとする。また、ダイオードの順方向電圧は0Vと近似する。さらに、スイッチSがオン並びにオフしている時間をそれぞれTON[S]、TOFF[S]とする。

ΔI1とVoを表す式の組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 

 

 

 

 

正解 (a)-(4), (b)-(2)

 解 説    

(a)

(4)の文章について、コイルのインダクタンスやコンデンサの静電容量値が小さくするということは、そこに蓄えるエネルギーも少しにするということです。

よって、その場合にはスイッチSがオンとオフを繰り返す周期(スイッチング周期)を短くしなければいけないので、「長くする」が誤りで、正しくは「短くする」となります。もしくは、「小さくする」を「大きくする」に変えても良いです。

ちなみに、(3)のリプルとは、ripple(小波、さざなみ)のことで、電圧の変動(揺れ)を意味します。直流回路では理屈の上では電圧変動が起こりませんが、スイッチング電源回路においてはスイッチのオン・オフ時などにどうしても多少の電圧変動が起こってしまいます。

その対策として、(3)の記述にある通り、コンデンサを用いることでリプル電圧を押さえています。

(b)

まず前提条件として、リプルが小さくて電圧一定ということなので、コンデンサは無視できます。また、(a)の(2)の通り、スイッチSがONのときはダイオードに電流が流れないので、TONの間に関してはダイオードの存在も気にしなくて大丈夫です。つまり、出力電圧Voと電源電圧Eの間にあるのはコイルだけだと考えることができます。

よって、VoとEの電圧差はコイルによって生じる誘導起電力ということになりますが、この誘導起電力はコイルのインダクタンスL[H]、電流変化ΔI[A]、時間変化Δt[s]を用いると、

と表すことができます。

よって、今回は図2より、ΔI=ΔI1、Δt=TONなので、

となります。

続いて、スイッチSがOFFのとき、つまりTOFFの間について考えます。この時間帯の誘導起電力は、TONのときと同様に考えると、問題文よりダイオードの順方向電圧は0Vなので、

となります。

ここで、問題文によるとΔI1=ΔI2なので、上記2式の右辺同士をイコールで結んでVoについて解くと、

と計算することができます。

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