電験三種 H25年 機械 問17 問題と解説

 問 題     

伝熱に関する次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 直径1[m]、高さ0.5[m]の円柱がある。円柱の下面温度が600[K]、上面温度が330[K]に保たれているとき、伝導によって円柱の高さ方向に流れる熱流[W]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし、円柱の熱伝導率は0.26[W/(m・K)]とする。また、円柱側面からの放射及び対流による熱損失はないものとする。

  1. 45
  2. 110
  3. 441
  4. 661
  5. 1630

(b) 次の文章は、放射伝熱に関する記述である。

すべての物体はその物体の温度に応じた強さのエネルギーを( ア )として放出している。その量は物体表面の温度と放射率とから求めることができる。

いま、図に示すように、面積A1[m2]、温度T1[( イ )]の面S1と、面積A2[m2]、温度T2[( イ )]の面S2とが向き合っている。両面の温度にT1>T2の関係があるとき、エネルギーは面S1から面S2に放射によって伝わる。そのエネルギー流量(1秒当たりに面S1から面S2に伝わるエネルギー)Φ[W]はΦ=εσA1F12×( ウ )で与えられる。

ここで、εは放射率、σは( エ )、及びF12は形態係数である。ただし、εに波長依存性はなく、両面において等しいとする。また、F12は面S1、面S2の大きさ、形状、相対位置などの幾何学的な関係で決まる値である。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

   (ア)  (イ)   (ウ)       (エ)

  1. 電磁波  K   (T1-T2)   プランク定数
  2. 熱    K   (T14-T24)  ステファン・ボルツマン定数
  3. 電磁波  K   (T14-T24)  ステファン・ボルツマン定数
  4. 熱    ℃  (T1-T2)   ステファン・ボルツマン定数
  5. 電磁波  ℃  (T14-T24)  プランク定数

 

 

 

 

 

正解 (a)-(2), (b)-(3)

 解 説    

(a)

与えられている条件を図に示すと以下のようになります。

上図を見てもわかるように、円柱が太い(面の面積が大きい)ほど熱が流れやすくなるので、熱流は大きくなります。また、円柱が長いほど熱は流れにくくなるので、熱流は小さくなります。さらに、上面と下面の温度差が大きければ熱は流れやすく、温度差が小さければ熱が流れにくいということもイメージしやすいと思います。

よって、熱流は「面の面積」と「上面と下面の温度差」に比例し、「距離」に反比例します。

単位に注意にしつつ、以上のことを式にすると、以下のように計算できます。

(b)

熱の伝わり方(伝熱)の3つのパターン「伝導、対流、放射」のうち「放射」の出題です。伝導は固体の中での熱の移動、対流は流体(液体や気体)の流れを伴う熱の移動であるのに対し、放射は電磁波による熱の移動で、具体例として太陽光や電子レンジが挙げられます。よって、( ア )には「電磁波」が入ります。

また、( イ )は温度の単位を「K(ケルビン)」とするか「℃」とするかの話ですが、絶対温度[K]=(摂氏+273)[℃]なので、温度差について考えるのであれば、これらはどちらを使っても問題ありません。たとえば、30℃と70℃は絶対温度にすると303Kと343Kですが、どちらも温度差は40℃(40K)です。

ここで、先に(ウ)の解答を考えますが、( ウ )が「(T1-T2)」であると仮定すると、これは( イ )の単位がKでも℃でも良くなってしまい、問題として成り立ちません。よって、( ウ )には「(T14-T24)」が入りますし、そうでなくても、放射のエネルギーは「温度の4乗」で決まるということは、押さえておきたい重要事項です。

話を( イ )に戻しますが、絶対温度は熱力学温度ともいわれ、各種の公式や定理などで用いられるのはこちらです。上記の通り、温度差が問題になるときに限ってはKでも℃でもいいのですが、℃じゃないといけないケースはありません。よって、( イ )は「K」となります。

最後の( エ )は知識問題ですが、ここには「ステファン・ボルツマン定数」が入ります。これ自体も知っておきたい知識ではありますが、( ア )~( ウ )が確定していれば( エ )は自動的に決まります。

ちなみに、プランク定数は、放射エネルギーは振動数に比例する、という法則の比例定数です。

  • E:光子のエネルギー[J]
  • h:プランク定数[J/s]
  • v:振動数[Hz]=[s-1]

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