電験三種 H24年 機械 問12 問題と解説

 問 題     

次の文章は、電気加熱に関する記述である。

導電性の被加熱物を交番磁束内におくと、被加熱物内に起電力が生じ、渦電流が流れる。( ア )加熱はこの渦電流によって生じるジュール熱によって被加熱物自体が昇温する加熱方式である。抵抗率の( イ )被加熱物は相対的に加熱されにくい。

また、交番磁束は( ウ )効果によって被加熱物の表面近くに集まるため、渦電流も被加熱物の表面付近に集中する。この電流の表面集中度を示す指標として電流浸透深さが用いられる。電流浸透深さは、交番磁束の周波数が( エ )ほど浅くなる。したがって、被加熱物の深部まで加熱したい場合には、交番磁束の周波数は( オ )方が適している。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

   (ア)  (イ)  (ウ)  (エ)  (オ)

  1. 誘導  低い  表皮  低い  高い
  2. 誘電  高い  近接  低い  高い
  3. 誘導  低い  表皮  高い  低い
  4. 誘電  高い  表皮  低い  高い
  5. 誘導  高い  近接  高い  低い

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

( ア )について、誘導加熱も誘電加熱もどちらも重要事項ですが、誘導加熱の「誘導」は電磁誘導のことです。コイルの中に金属などの導電体を入れ、交流電源に接続して電流を流すと、交番磁界が発生することにより渦電流が流れます。

この現象が電磁誘導であり、こうして生じた渦電流がコイル中の導電体(金属など)を通過する際には、渦電流損やヒステリシス損が発生します。これらの損失は熱となりますが、この熱を利用した加熱方式が誘導加熱です。よって、( ア )には「誘導」が入ります。

また、ジュール熱で加熱している都合上、抵抗率は大きいほうがジュール熱が多く発生するので、加熱されにくいほうを答える( イ )には、「低い」が入ります。

一方、誘電加熱の説明は次の通りです。

誘電体を電界中に置くと、誘電体の一つ一つの分子が様々な方向を向き、分子表面にある電荷の偏りもバラバラな方向で存在します。そこに高周波電圧を加えると、バラバラだった分子が一斉に同じ方向を向き、電圧の向きが変わるたびに分子の双極子が反転します(周波数が高いので、短い時間で分子の向きが何度も何度も反転を繰り返すことになります)。

この反転の際、隣り合った分子同士が接触し、摩擦熱が発生しますが、これを利用した加熱方法が誘電加熱です。

両者の違いがわかりにくい場合は、誘導加熱は被加熱物が導電体であり、誘電加熱は被加熱物が誘電体(≒絶縁体)であると覚えておくと、その違いがはっきりするかもしれません。

交番磁束が被加熱物の表面近くに集まる特徴は、「表皮効果」と呼ばれます。電流浸透深さは、交番磁束の周波数が高ければ浅く、周波数が低ければ深部まで加熱することができます。これは知識として知っていればそれまでですが、イメージとしては赤外線と紫外線の関係とリンクさせて覚えることが可能です。

つまり、波長の長い(=周波数が低い)赤外線は、被加熱物の深部にまで届いてたとえば身体を温めたりすることができます。一方、波長の短い(=周波数が高い)紫外線は、物の表面に付いた菌を殺菌したり、人が浴びすぎると皮膚がんの原因になったりと、表面に対する作用が主です。

今回の話は赤外線や紫外線とは異なりますが、周波数(波長)と浸透深さという面では、同じように考えることができます。よって、( ウ )には「表皮」、( エ )には「高い」、( オ )には「低い」が入ります。

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