配電方式(スポットネットワーク方式など)

配電方式には、代表的なものに以下の5種類があります。電験三種の出題という観点では、このうちスポットネットワーク方式が最も重要といえます。

  • 放射状方式(樹枝状方式)
  • ループ方式(環状方式)
  • バンキング方式
  • 低圧ネットワーク方式(レギュラーネットワーク方式)
  • スポットネットワーク方式

放射状方式(樹枝状方式)

放射状方式は、ある幹線を軸として、そこから枝分かれ(分岐線)を延ばす配電方式です。仕組みが簡単なので建設費が安く、必要に応じて後から分岐線を増設することも容易です。

一部が故障した場合、区分開閉器によって事故区間を遮断することが可能ですが、その際の停電区間が比較的広いことがデメリットとして挙げられます。

ループ方式(環状方式)

ループ方式(環状方式)は、下図のように2つの線路を結合開閉器でつなぎ、ループ状にした配電方式です。

一部が故障した場合、故障点を挟むかたちで両側の区分開閉器を開にすれば、ほかの区間の停電は避けられます。ループ方式は結合開閉器を設置して線路を構成するので、放射状方式よりも建設費は高くなるものの、高い信頼度が得られるために負荷密度の高い地域で用いられています。

バンキング方式

バンキング方式は、下図の上側(一次側)の高圧配電線と下側(二次側)の低圧配電線とを、複数の変圧器で接続するという配電方式です。

この方式は電圧降下や電力損失が少ないのがメリットですが、カスケーディングを起こし得るのがデメリットです。

カスケーディングとは、何かの原因で高圧ヒューズが溶断したり低圧配電線に短絡電流が流れたりした際、ほかの区分の変圧器にまで短絡電流が流れて、広い範囲で次々に停電を起こしてしまうことです。

このカスケーディングを防ぐため、各区間の間に区分ヒューズを設けて保護します。

低圧ネットワーク方式(レギュラーネットワーク方式)

低圧ネットワーク方式(レギュラーネットワーク方式)は、一つの変圧器の二次側から複数のフィーダを引き出し、断路器、ネットワーク変圧器を経て負荷へ電力を供給する配電方式です。

格子状の構造となっているため、どれか一つのフィーダが故障したとしても、ほかのフィーダから電気を賄うことができます。そのため、この方式は電力供給の信頼性が非常に高く、停電になることはほとんどありません。

しかし、建設費が高いので、負荷密度の高いところで使うくらいしか採算が合わず、採用例はそう多くありません。

スポットネットワーク方式

電験三種の試験対策という面からいえば、最も重要なのがこのスポットネットワーク方式です。

スポットネットワーク方式は、下図のように複数の高圧(または特別高圧)配電線からそれぞれ回線を引き込み、断路器、ネットワーク変圧器、ネットワークプロテクタ(プロテクタヒューズ&プロテクタ遮断器)を設置し、二次側のネットワーク母線に接続するような配電方式です。

図を見てわかる通り、一つの高圧(または特別高圧)配電線が故障しても、残りの配電線から電気が供給されるので、電力供給の信頼性が非常に高いです。

また、ネットワークプロテクタ(プロテクタヒューズ&プロテクタ遮断器)は自動制御が可能なので、事故時の対応や復旧についても自動的に行われます。

さらに、ほとんどの保護装置は変圧器の二次側に施設され、一次側は断路器が必要になるくらいです。そのため、受電設備が簡素化でき、スペース的にも予算的にもメリットが大きいです。

これらのように、スポットネットワーク方式はメリットがたくさんあるのですが、二次側のネットワーク母線が故障してしまった際には、そこに接続されている全ての需要家が停電を起こすことになります。

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