タービン発電機(水力発電機との比較)

前項までは汽力発電(火力発電)のボイラやタービンについて解説をしましたが、この項ではその後段である発電機の特徴を紹介します。

火力発電の蒸気タービンからつながる発電機のことを「タービン発電機」といい、水力発電のときに水車からつながっていた水車発電機と比較するとわかりやすいと思いますので、並べて解説をします。

回転速度と極数

火力発電のタービンと水力発電の水車はどちらが速く回っているかというと、それぞれ蒸気(気体)と水(液体)を使っているので、蒸気のほうが勢いがあり、タービンの回転速度のほうが速いです。

具体的な数字をいえば、蒸気タービンの回転速度は1500,1800,3000,3600[min-1]のいずれかです。大雑把に、数千と覚えてしまってもよいかもしれません。一方、水車は数百と覚えてください。普通は300程度、高くても1000[min-1]くらいです。

また、タービンの極数は2か4です。

タービンの並び方

火力発電所によってはタービンが2つ(高圧タービンと低圧タービン)ありますが、これが同一軸で縦に並んでいる場合を、「タンデムコンパウンド形」といいます。タンデムは直列、コンパウンドは複合、という意味です。一方、2つのタービンを別々の軸にして横に並べると、「クロスコンパウンド形」と呼びます。

発電機の容量

発電機の容量をタービン発電機と水車発電機とで比べると、これはタービンのほうが大きくなります。具体的な数字まで暗記する必要はないと思いますが、タービンの場合大きければ100万[kW]クラスのものがある一方、水車のほうは50万[kW]にも届かないくらいです。

回転子の構造

回転子の構造について、タービン発電機は回転数が多いため、細長い横軸の円筒形をしています。回転子の直径を大きくする(円筒形の太さを太くする)と高速回転に機械強度が耐えられなくなるので、直径ではなく長さを長くします。

一方、水車発電機はそこまで回転速度が高くないので、回転子の直径も大きくでき、立軸、横軸のいずれにも対応します。このように、水車発電機で使われるタイプの回転子を突極形といいます。

発電機の冷却方式

タービン発電機の冷却方式は「水素冷却方式」です。ここは大事です。水車発電機は空気による冷却をしていますが、水素を使うと以下のようなメリットがあります。

  1. 水素は比重が小さく、回転子が回転するときの抵抗が少ない
  2. 水素は熱伝導率が高く、冷却効率が良い
  3. 水素は(空気と比べて)不活性ガスなので、内部構造を痛めにくい
  4. 全閉形なので、異物混入もなく、騒音対策にもなる

デメリットとしては、回転子軸から水素が漏れないように密封油装置が必要となることなどが挙げられます。

短絡比

タービン発電機の短絡比は低く、そのため安定度はやや欠けます。

一方の水車発電機は短絡比は1.0~1.5と安定しています。

負荷遮断時の挙動

発電機は急な事故で負荷が遮断されると、調速機がはたらいて発電機が壊れる前にちゃんと非常停止するようになっています。その非常停止が始まるタイミングが、タービン発電機と水車発電機でいくらか異なります。

タービン発電機は定格速度の110%超になると調速機が作動するようになっています。

一方、水車発電機はものにもよりますが、一般的にタービン発電機よりも余裕があり、ある程度の負荷変動には耐えられます。

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