蒸気・水の流れと諸設備の概要

前項までは水力発電に関する説明でしたが、本項からは「火力発電」について扱います。

火力発電というのは、燃料を燃やすことで得られたエネルギーを電気に変えるという発電方法ですが、電気へ変換する際に用いる原動機によって、3種類の発電所に分類されます。

まず、もっともポピュラーなのは蒸気タービンを原動機とする「汽力発電所」です。次に、ディーゼル機関やガス機関を原動機とすれば「内燃力発電所」となります。また、ガスタービンが原動機だと、「ガスタービン発電所」です。

汽力発電所は容量をあまり気にせずに設置でき、汎用性があるため、多くの場所で使われています。一方、内燃力発電所やガスタービン発電所は小容量向きなので、その使い方は限られます。原動機の違いを除けば、どれも似たような仕組みであるため、以下では汽力発電所のことを中心に解説していきます。

汽力発電の「汽」という字には、蒸気という意味があります。汽力発電の流れを大雑把に説明すると、以下のようになります。

  1. 燃料(原油など)を燃やして、熱を得る
  2. その熱でボイラの中の水を温め、蒸気(水蒸気)に変える
  3. その蒸気の勢いで蒸気タービンを回転させる
  4. 蒸気タービンの運動エネルギーを発電機で電気エネルギーに変える
  5. 蒸気タービンを回転させてエネルギーを失った蒸気は水に戻るため、再びボイラへ

以上、本当に大雑把な流れでした。

もう少し具体的に説明すると、汽力発電所は3つのライン(火のライン・水のライン・電気のライン)に分けられます。

火のラインというのは、燃料が通るような設備で、具体的には燃料設備とボイラになります。

水のラインとは、水と蒸気が通る設備です。具体的にはボイラ、蒸気タービン、復水装置です。ボイラは水が熱されて蒸気に変わる場所です。蒸気タービンでは蒸気がタービンを回し、そこでエネルギーを失います。復水装置では、蒸気タービンを抜けた蒸気の混じったものを冷やし、水とします。これを再びボイラへと送ることで、水を循環させます。

電気のラインは、発電機と送変電設備となります。

この3つのラインで最も重要なのは水のラインです。汽力発電の大まかな流れは上記のとおりですが、もう一度、今度はやや丁寧に振り返ります。

蒸発管

蒸発管というのはボイラのメインとなる装置で、水が蒸気に変わる場所です。蒸発管に過熱器や再熱器(後述)を合わせてボイラと呼びます。この蒸発管で、水は熱を受け取って蒸気に変わります。

過熱器

蒸発管の次に蒸気は過熱器へと進みます。ここへ入る蒸気にはまだ幾らか水分を残しているため、ここでさらに過熱して完全に蒸気へと変換します。

高圧タービン

蒸気が高圧タービンへ送られると、蒸気の勢いでタービンを回転させるという最初の仕事をします。仕事を終えると、蒸気のエネルギー(温度)はやや落ちます。

再熱器

ひと仕事を終えた蒸気は再熱器で再び過熱され、勢いを取り戻します。

中・低圧タービン

再熱器のあとにもうひとつのタービンがあり、こちらを中・低圧タービンといいます。ここで仕事をしたあとの蒸気はだいぶエネルギーを失っています。

復水器

中・低圧タービンで仕事を終えた蒸気は、この復水器で冷やされて水に変わります。

復水ポンプ

復水ポンプとは、復水器で得られた復水を汲み上げるポンプで、復水をこれ以降の給水設備へと導きます。

低圧給水加熱器

給水加熱器とは、給水(これからボイラに入る水のこと)を温める装置のことです。給水を温める熱源については、高圧タービンや中・低圧タービンの途中から蒸気を取り出し、その蒸気が熱源となっています。タービンの途中から蒸気を抜き出すことを「抽気」といいます。よく用いられる言葉です。

この操作により、熱効率の向上を実現しています。また、この工程は低圧給水加熱器なので、中・低圧タービンから抽気した蒸気を使います。高圧給水加熱器も後ほど出てきます。

脱気器

脱気器とは、給水に含まれる気体成分(酸素や炭酸ガス)を除く場所です。酸素や炭酸ガスはボイラや腐食させる原因なので、脱気させる必要があります。

給水ポンプ

給水ポンプは給水の圧力を上げるためのポンプです。この手前の脱気器で気体を除いておかないと給水ポンプ以降は圧力の高い場所となるので、ボイラ・水管の腐食が起こりやすくなってしまいます。そのため、脱気器は給水ポンプの手前に設置します。

高圧給水加熱器

役割は低圧給水加熱器と同じで、給水をさらに加熱します。ここでは高圧タービンから抽気した蒸気を使います。

そして、このあと節炭器からさらに熱を受け取り(節炭器については次項参照)、最初の蒸発管へと進み、これで水(蒸気)が1周したことになります。

コメント