電験三種 R4年度上期 電力 問16 問題と解説

 問 題     

定格容量80MV・A、一次側定格電圧33kV、二次側定格電圧11kV、百分率インピーダンス18.3%(定格容量ベース)の三相変圧器TAがある。三相変圧器TAの一次側は33kVの電源に接続され、二次側は負荷のみが接続されている。

電源の百分率内部インピーダンスは、1.5%(系統基準容量ベース)とする。ただし、系統基準容量は80MV・Aである。なお、抵抗分及びその他の定数は無視する。

次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 将来の負荷変動等は考えないものとすると、変圧器TAの二次側に設置する遮断器の定格遮断電流の値[kA]として、最も適切なものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 5
  2. 8
  3. 12.5
  4. 20
  5. 25

(b) 定格容量50MV・A、百分率インピーダンスが12.0%(定格容量ベース)の三相変圧器TBを三相変圧器TAと並列に接続した。

40MWの負荷をかけて運転した場合、三相変圧器TAの負荷分担の値[MW]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし、三相変圧器群TAとTBにはこの負荷のみが接続されているものとし、抵抗分及びその他の定数は無視する。

  1. 15.8
  2. 19.5
  3. 20.5
  4. 24.2
  5. 24.6

 

 

 

 

 

正解 (a)-(5), (b)-(3)

 解 説    

(a)

問われているのは遮断器の定格遮断電流値ですが、これは事故時の短絡電流を許容できなくてはならないので、短絡電流よりも大きな値でなくてはなりません。よって、短絡電流を計算で求めて、それを少し上回るくらいの値の選択肢が正解となります。

まず最初に、問題文を図示すると次のように描くことができます。

次に確認しておきたいのが、%インピーダンス、定格電流、短絡電流をつなぐ式です。これは重要公式として押さえておいてください。

  • %Z:%インピーダンス [%]
  • I:定格電流 [A]
  • Is:短絡電流 [A]

今回求めたいのはIsなので、これから%ZとIを計算していくことになります。まずは、%Zのほうから考えます。

問題文に記載されている%Zは2つ(18.3%と1.5%)ありますが、どちらも基準容量が80MV・Aで一致しているため、三相変圧器全体の%Zは単純にこれらの和になります。

ちなみに、もし基準容量が異なっていたら、これらの基準を合わせなくてはなりません。この場合の解法はR1 電力 問8の解説を参考にしてください。

これで%Zの値がわかったので、続いて定格電流Iを求めます。

基準容量Pは80[MV・A]、変圧器二次側の定格電圧Vは問題文より11[kV]なので、定格電流Iは電力の公式を使って計算することができます。

なお、事故点は変圧器の二次側なので、定格電流や定格電圧も変圧器の二次側で考えます。つまり、定格電圧は一次側の33[kV]ではなく二次側の11[kV]を使います。また、三相なので下式で√3を入れ忘れないように注意してください。

以上から、%Zの値は(2)式で、Iの値は(3)式で求めることができたので、これを(1)式に代入して短絡電流Isを求めます。

よって、短絡電流Isは21.2[kA]であり、遮断器の定格遮断電流はこれを上回らなくてはならないので、選択肢のうち21.2以上で最も近い値である、(5)の「25」が正解となります。

(b)

並列に接続した変圧器の負荷分担に関して、問題文に記載されている%Zは2つ(18.3%と12.0%)ありますが、それぞれ基準とする容量が異なっています(80[MV・A]と50[MV・A])。よって、まずはこれらの基準を合わせる必要があります。

どちらをどちらに合わせても構いませんが、今回は変圧器TAの80[MV・A]を基準容量として計算していきます。変圧器TBの%ZBを50[MV・A]基準から80[MV・A]基準に変換した値を%ZB‘とすると、これは以下の(4)式で表すことができます。

これで基準容量がそろった%ZAと%ZB‘がわかりました。よって、変圧器TAの負荷分担PA[MW]は次のような計算によって算出できます。なお、外部負荷の容量Pは、問題文より40[MW]です。

以上から、正解は(3)となります。

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