開閉装置(遮断器・断路器)

発電所で作った電気は一度「変電所」に送られ、その後に各家庭や事業所などの需要家のもとに届きます。変電所には「変圧器」、「開閉装置(遮断器・断路器)」、「調相機器」、「避雷器」などがあります。

変圧器は文字通り、電圧を変える設備です。発電所で得られる電気は電圧の高い場合が多いですが、ここではそれを需要家が使うような低い電圧に変えます。変圧器のより具体的な説明は変圧器の結線方式以降のページで扱います。

開閉装置は遮断器、断路器、負荷開閉器などから成ります。遮断器と断路器は特に大事ですので、この項で詳しく解説していきます。

調相機器は電圧調整をおこなうことで電力損失を軽減するための設備です。これについては調相設備(電力用コンデンサ・分路リアクトル)のページで扱います。

避雷器は雷害対策として設置される設備です。架空送電線の雷害対策のページで扱います。

遮断器は、送電線路の運転・停止、故障電流の遮断などに用いられます。たとえば、送電線などに何かしらのトラブルが生じた際、その事故点の周囲の電流を遮断することで、正常な部分に悪影響を及ぼすのを防ぐ役割を果たします。

遮断器にはいくつかの種類があるので、代表的なものを以下で一つずつ解説していきます。

「ガス遮断器」はSF₆(六フッ化硫黄)ガスを使って電流を遮断するような遮断器です。

SF₆は無色無臭の気体で、無毒、不活性、不燃性で絶縁性に優れ、かつ安価という、遮断器に使うには非常に都合の良い物質です。また、この遮断器はガスを封入しているので完全密封構造をしていて、騒音が小さいです。さらにいえば、ガスが不活性かつ不燃であることから、安全性が高く、保守も容易です。

以上のような理由から、これはかなり使いやすい遮断器で、66[kV]以上の回路で多用されています。高めの電圧のときに使われる、と覚えておくと良いかもしれません。

「真空遮断器」は、遮断器内が真空です。真空というのは絶縁性に優れているので、こちらもガス遮断器と同様に優秀な遮断器のひとつです。

真空状態を作るため完全密封構造となっているので騒音が小さく、真空なので火災の心配もなく、こちらも安全性が高く保守が容易です。また、小形軽量かつ電極の寿命が長いという長所もあります。

真空遮断器は77[kV]以下の回路でよく使われます。こちらは低めの電圧範囲で使われる、と覚えてください。

電流を遮断した際にはアーク放電が発生し、これを消滅させないと事故につながりますが、このアーク放電を消滅させることを「消弧」といいます。遮断器に高圧の空気を吹き付けることで消弧するタイプの遮断器を「空気遮断器」といいます。

遮断能力は高く、電圧範囲も11～500[kV]と広いのですが、空気遮断器にはいくつかの弱点もあります。まず、遮断時の騒音が大きいことです(完全密封構造でないため)。また、圧縮空気を作るために空気圧縮装置が必要です。この保守に手間が掛かります。

このような理由により、現在はこの空気遮断器は下火で、ガス遮断器や真空遮断器のほうが選ばれています。

「油遮断器」はアーク放電のエネルギーを使って油を分解しガス化させ、そのガスをアークに吹き付けて消弧させます。遮断能力は高く騒音も小さいのですが、油を使っていることから火災の危険性があります。また、保守にも手間が掛かるため、この油遮断器も空気遮断器と同じくだんだんと使われなくなっています。

遮断するアーク電流自身の磁界と電磁力を使って消弧するのが「磁気遮断器」です。火災の心配がなく保守も簡単ですが、コストが高いため、やはりガス遮断器や真空遮断器に比べるとメリットが少ないです。

以上が遮断器の説明でした。次は断路器の説明です。断路器は上で紹介してきた各種の遮断器とは別物なので注意してください。

断路器は、遮断器の端(片方だったり両端だったりします)に設置されている装置で、機器の点検や修理の際に回路を切り離すことを目的として、回路の開閉に用いられます。

ある点を周囲の回路から切り離すというのは遮断器も断路器も一緒ですが、用途が違います。遮断器はトラブル時に事故点を周囲の回路から切り離すために使われます。一方、断路器は保守点検を行う際に機器を周囲の回路から確実に切り離すために使われます。

つまり、断路器は遮断器ほど過酷な状況で使うものではないので、わずかな電流しか遮断できないように設計されています。そのため、遮断器が開いていないと(遮断器で故障電流や負荷電流を切っていないと)断路器が操作できないようになっています。

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