水力発電所の概要

水力発電は、高い位置にある水を低い位置にある水車のところまで落とし、その水車の回転によって発電機が発電します。つまり、もともとの位置エネルギーは運動エネルギー(または圧力エネルギー)を経て電気エネルギーに変わります。この項では、水力発電の仕組みについて解説していきます。

まず、水力発電は「ダム」から始まります。ダムは貯水と取水を目的とするもので、コンクリートでできていればコンクリートダム、岩や土などの天然物でできていればフィルダムに分類されます。

次は「取水口」です。ダムから導水路へ水を流すための取出し口のことを取水口といいます。この取水口から流れ出てくる水は土砂で濁っているので、それらを除去するために取水口の後ろに沈砂池を設けます。

取水口の次は「導水路」があります。これは取水口から水槽へと水を導くための水路のことです。圧をかけて水を流すか否かによって、圧力水路と無圧水路に分けられます。

導水路の先に「水槽」があります。導水路が圧力水路であった場合、ここでの水槽は「サージタンク」と呼ばれます。圧力水路内では当然、水に圧力が掛かっていますが、あまり圧力が上昇すると水管に負荷が掛かってしまいます。そこでサージタンクでは過剰な圧を逃がし、水管が痛むのを防ぐ役割を果たします。

一方、導水路が無圧水路のとき、水槽は「上水槽」と呼ばれます。これは流量調整の役割を果たすことと、土砂を沈殿させて除去することを目的としています。

水槽の次が「水圧鉄管」です。ここは高い位置にある水槽から、低い位置にある水車までを繋ぐすべり台だと思ってください。この水管鉄管を経る過程で、水の持つ位置エネルギーはどんどん運動エネルギーへと変換されます。

次が「水車」です。水車は水力発電の肝となりますので、ここの詳細については水車の種類と特徴のページにて詳解します。大雑把にいうと、高いところから流れてくる水の勢いを使って水車を回転させ、運動エネルギーや圧力エネルギーを得る場所です。

水車を経た水は最後に「放水路」へと進みます。ここは、水車を回転させてエネルギーを失った水を、河川などへ放流するための通り道です。導水路のときと同じく、圧をかけるかどうかで、圧力水路と無圧水路に分かれます。

以上の流れを押さえることが重要なのですが、水力発電所のタイプによって、とある設備があったりなかったりします。水力発電所のタイプというのは、最初のダムの部分がどのようなものかで3つに分かれます。

まず、「水路式」と呼ばれるものは、ダムらしいダムがなく、河川から直接水を引くタイプです。この場合、河川の上流から下流へと流れる道が、そのまま水路となります。よって、圧力水路は使わずに無圧水路ということになります。

2つ目は「ダム式」です。これはダムを作って水をせき止めるタイプです。ダムに水が溜まると、取水口には圧力が掛かってくるので、このタイプだと圧力水路となります。

3つ目は「ダム水路式」です。ダムによる圧力と、河川の上流下流の落差の両方を利用したタイプです。

次に、落差の話をします。水力発電では、ダムのところにある水と、水車のところにある水の高さの差が重要になります。ダムの位置、水車の位置というと高さの幅が大きくて曖昧なので、普通は取水口の位置と放水口の位置を基準とします。この取水口と放水口の水位の差を「総落差」といいます。単位は[m]です。

ただ、実際には水が流れる過程でエネルギーの損失がありますので、この損失分を高さに換算したものを「損失水頭」とします(損失水頭は、損失落差と呼ばれることもあります。これらは全く同じ意味です)。

そして、総落差から損失水頭を差し引いたものが実際に使える分なので、これを「有効落差」といいます。この有効落差が大きければ大きいほど、生産できるエネルギーも大きくなります。

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