問 題
電気工作物に起因する供給支障事故について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 次の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
① 電気事業法第39条(事業用電気工作物の維持)において、事業用電気工作物の損壊により( ア )者の電気の供給に著しい支障を及ぼさないようにすることが規定されている。
② 「電気関係報告規則」において、( イ )を設置する者は、( ア )の用に供する電気工作物と電気的に接続されている電圧( ウ )V以上の( イ )の破損又は( イ )の誤操作若しくは( イ )を操作しないことにより( ア )者に供給支障を発生させた場合、電気工作物の設置の場所を管轄する産業保安監督部長に事故報告をしなければならないことが規定されている。
③ 図1に示す高圧配電系統により高圧需要家が受電している。事故点1、事故点2又は事故点3のいずれかで短絡等により高圧配電系統に供給支障が発した場合、②の報告対象となるのは( エ )である。
- ア イ ウ エ
- 一般送配電事業 自家用電気工作物 6000 事故点1又は事故点2
- 送電事業 事業用電気工作物 3000 事故点1又は事故点3
- 一般送配電事業 事業用電気工作物 6000 事故点2又は事故点3
- 送電事業 事業用電気工作物 6000 事故点1又は事故点2
- 一般送配電事業 自家用電気工作物 3000 事故点2又は事故点3
(b) 次の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
① 受電設備を含む配電系統において、過負荷又は短絡あるいは地絡が生じたとき、供給支障の拡大を防ぐため、事故点直近上位の遮断器のみが動作し、他の遮断器は動作しないとき、これらの遮断器の間では( ア )がとられているという。
② 図2は、図1の高圧需要家の事故点2又は事故点3で短絡が発生した場合の過電流と遮断器(遮断器A及び遮断器B)の継電器動作時間の関係を示したものである。( ア )がとられている場合、遮断器Bの継電器動作特性曲線は、( イ )である。
③ 図3は、図1の高圧需要家の事故点2で地絡が発生した場合の零相電流と遮断器(遮断器A及び遮断器B)の継電器動作時間の関係を示したものである。( ア )がとられている場合、遮断器Bの継電器動作特性曲線は、( ウ )である。また、地絡の発生箇所が零相変流器より負荷側か電源側かを判別するため( エ )の使用が推奨されている。
- ア イ ウ エ
- 同期協調 曲線2 曲線3 地絡距離継電器
- 同期協調 曲線1 曲線3 地絡方向継電器
- 保護協調 曲線1 曲線4 地絡距離継電器
- 保護協調 曲線2 曲線4 地絡方向継電器
- 保護協調 曲線2 曲線3 地絡距離継電器
解 説
(a)
( ア )には「一般送配電事業」か「送電事業」が入るので、まずはこれらの用語の確認をしておきます。特に、一般送配電事業のほうはこの試験でたびたび登場するので、重要事項として知っておくべきです。
一般送配電事業とは、託送供給と電力量調整供給を行う事業のことを指す言葉です。
ある発電事業者が発電した電気を離れた需要家に供給したいとき、送配電設備がないと遠くへ電力を供給することができません。そこで、送配電ネットワークを持つ電力会社に送電を託すことになります。これが託送供給です。
つまり、一般送配電事業者とは、送配電ネットワークを有して託送供給を行える電力会社のことで、具体的には東京電力パワーグリッド㈱や、北海道電力㈱、関西電力㈱などが挙げられます。
一方で、送電事業とは、一般送配電事業者に振替供給を行う事業のことです。振替供給は託送供給の一種で、電気を受電するのと同時に、離れた場所で同じ分だけ供給することをいいます。受電した電気そのものを遠くまで送電する(=接続供給)わけではないので、振替と名付けられています。
ここで設問に戻りますが、一般的に考えて、需要家が受電するための送配電ネットワークを管理しているのは一般送配電事業者です。そのため、需要家側の事故などにより悪影響を与えるとしたら、その相手は「一般送配電事業者」となるため、( ア )にはこれが入ります。
( イ )と( ウ )は事故報告に関する出題です。今回は穴埋めになっていませんが、事故報告の報告先が産業保安監督部長であることは重要事項として押さえておいてください。
また、報告する必要がある事故の具体例を以下に挙げます。今回は下記の5番目からの出題です。
- 感電、破損事故、電気工作物の誤操作もしくは電気工作物を操作しないことにより人が死傷した事故
- 電気火災事故(工作物にあつては、その半焼以上の場合に限る。)
- 電気工作物の破損、電気工作物の誤操作もしくは電気工作物を操作しないことにより、他の物件に損傷を与え、その機能を損なわせた事故
- 発電所等の破損事故
- 電気工作物と電気的に接続されている電圧3000V以上の自家用電気工作物の破損事故、自家用電気工作物の誤操作もしくは自家用電気工作物を操作しないことにより一般送配電事業者または特定送配電事業者に供給支障を発生させた事故
上記の5番目の規定により、( イ )は「自家用電気工作物」、( ウ )は「3000」となります。
最後の( エ )に関して、高圧需要家にとって保安上の責任分界点よりも手前で起きた事故は報告対象となり、責任分界点よりも奥で起きた事故は報告対象外となります。よって、図1の場合には事故点2と事故点3が報告対象です。
よって、( エ )には「事故点2又は事故点3」となります。
以上から、正解は(5)です。
(b)
( ア )に関して、短絡事故や地絡事故が発生した際には遮断器を使うことで、事故の影響が広範囲に広がらないようにする必要があります。この際、動作するべきなのは事故点直近上位の遮断器だけで、もしほかの遮断器が働いてしまったら正常なところにも電気の供給に支障が出てしまいます。
そうならないよう、実際には事故点直近上位の遮断器だけが動作し、ほかの遮断器は特に何も動作しないようになっています。このような遮断器間の連動を保護協調といいます。よって、( ア )は「保護協調」です。
( イ )に関して、事故点2か3で短絡事故があったなら、事故点直近上位の遮断器Bが遮断器Aよりも先に動作しなくてはなりません。もし遮断器Aが先に動作してしまったら、図1の低圧需要家のほうにも電気が送れず、保護協調がとられていないことになります。
つまり、図2の曲線1と曲線2のうち、ある電流(短絡電流)が流れたときの動作時間が短いほうが遮断器Bのはずなので、図2の横軸の適当な電流値に対して縦軸の動作時間が小さくなっている曲線2のほうが遮断器Bに該当します。よって、( イ )には「曲線2」が入ります。
上記のように考えれば十分だと思いますが、実際には短絡電流は下図で示したあたりとなります。
曲線2(遮断器B)が途中で変な形になっているのは、短絡電流が流れた際の曲線1(遮断器A)との動作時間の差を大きくしたいからです。ここの時間的余裕を作ることで、遮断器Aが動作する前に事故点を特定することができ、遮断器Aを動作させないで済みます(保護協調がとられます)。
つまり、曲線2が変な形になっているのは、これが保護協調の特性を備えた遮断器であるからだといえます。
( ウ )についても考え方は( イ )と同じです。問題文②は短絡事故で問題文③は地絡事故という違いはありますが、保護協調のためには、どちらも遮断器Bが先に動作しなくてはいけません。
つまり、図3のうち動作時間の短い(グラフ上でより下側にある)曲線4が、遮断器Bの特性を表しています。よって、( ウ )には「曲線4」が入ります。
( エ )は、その直前に「負荷側か電源側かを判別するため」とあるため、知りたいのは距離ではなく方向です。そのため、( エ )は「地絡方向継電器」となります。
以上から、正解は(4)です。
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