問 題
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」における架空弱電流電線路への誘導作用による通信障害の防止に関する記述の一部である。
- 低圧又は高圧の架空電線路(き電線路を除く。)と架空弱電流電線路とが( ア )する場合は、誘導作用により通信上の障害を及ぼさないように、次により施設すること。
- 架空電線と架空弱電流電線との離隔距離は、( イ )以上とすること。
- 上記aの規定により施設してもなお架空弱電流電線路に対して誘導作用により通信上の障害を及ぼすおそれがあるときは、更に次に掲げるものその他の対策のうち1つ以上を施すこと。
- 架空電線と架空弱電流電線との離隔距離を増加すること。
- 架空電線路が交流架空電線路である場合は、架空電線を適当な距離で( ウ )すること。
- 架空電線と架空弱電流電線との間に、引張強さ5.26kN以上の金属線又は直径4mm以上の硬銅線を2条以上施設し、これに( エ )接地工事を施すこと。
- 架空電線路が中性点接地式高圧架空電線路である場合は、地絡電流を制限するか、又は2以上の接地箇所がある場合において、その接地箇所を変更する等の方法を講じること。
- 次のいずれかに該当する場合は、上記1の規定によらないことができる。
- 低圧又は高圧の架空電線が、ケーブルである場合
- 架空弱電流電線が、通信用ケーブルである場合
- 架空弱電流電線路の管理者の承諾を得た場合
- 中性点接地式高圧架空電線路は、架空弱電流電線路と( ア )しない場合においても、大地に流れる電流の( オ )作用により通信上の障害を及ぼすおそれがあるときは、上記1のbの①から④までに掲げるものその他の対策のうち1つ以上を施すこと。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
- 並行 3m 遮へい D種 電磁誘導
- 接近又は交差 2m 遮へい A種 静電誘導
- 並行 2m ねん架 D種 電磁誘導
- 接近又は交差 3m ねん架 A種 電磁誘導
- 並行 3m ねん架 A種 静電誘導
解 説
問題文の最初のほうにある「誘導作用」には、静電誘導作用と電磁誘導作用の2つがあります。
架空電線路の電圧によって、架空電線路と架空弱電流電線路間のキャパシタンスを介して架空弱電流電線路に誘導電圧を発生させるのが、静電誘導作用です。
一方、架空電線路の電流によって、架空電線路と架空弱電流電線路間の相互インダクタンスを介して架空弱電流電線路に誘導電圧を発生させるのが、電磁誘導作用です。
両方の作用とも、それが生じる向きは電流の方向によって定まります。2本の電線が並行になっているときに影響を高め合うので、( ア )には「並行」が入ります。
ちなみに、2本の電線が接近・交差した場合にも混触などの危険性があるため、それはそれで離隔距離などの定めがあります。ただし、今回は誘導作用がテーマになっているため、「接近・交差」ではなく「並行」が正しいです。
架空電線と架空弱電流電線との離隔距離は2m以上と決められています。よって、( イ )には「2m」が入ります。
これは「電気設備技術基準の解釈」第52条の内容を正確に覚えていないと答えられませんが、( ア )、( ウ )、( エ )、( オ )をきちんと答えて、あとは選択肢から絞り込んでもよいと思います。
( ウ )に入るのは、「ねん架」です。ねん架というのは、送電線の配置箇所を区間ごとに入れ替えることです。そうすることで、各相のキャパシタンス(静電容量)やインダクタンスが等しくなり、電流や電圧の不均衡を防ぎ、誘導作用の軽減につながります。
A種接地工事とは、高圧や特別高圧のような高い電圧で使用する電気機器に対して行う接地工事です。一方、D種接地工事は、300V以下の低圧の電路に接続される電気機器に対して行う接地工事です。
今回は問題文より「低圧または高圧」とのことなので何ともいえませんが、問題文1bの規定自体が、1aの補助的な位置づけ(1aだけでもおそらく大丈夫だけれど、念のためにやっておく)なので、ここで行う金属線(硬銅線)の接地工事は、より簡単なほうのD種接地工事で構いません。よって、( エ )には「D種」が入ります。
( オ )について、( ア )のところですでに静電誘導と電磁誘導については説明済みです。電圧によって起こるのが静電誘導、電流によって起こるのが電磁誘導ですが、( オ )の直前には「電流の」とあるので、( オ )には「電磁誘導」が入ります。
以上から、正解は(3)となります。
コメント