電験三種 H28年 機械 問6 問題と解説

 問 題     

次の文章は、電源電圧一定(交流機の場合は多相交流巻線に印加する電源電圧の周波数も一定。)の条件下における各種電動機において、空回しの無負荷から、負荷の増大とともにトルクを発生する現象に関する記述である。

無負荷条件の直流分巻電動機では、回転速度に比例する( ア )と( イ )とがほぼ等しく、電機子電流がほぼ零となる。この状態から負荷が掛かって回転速度が低下すると、電機子電流が増大してトルクが発生する。

無負荷条件の誘導電動機では、周波数及び極数で決まる( ウ )と回転速度とがほぼ等しく、( エ )がほぼ零となる。この状態から負荷が掛かって回転速度が低下すると、( エ )が増大してトルクが発生する。

無負荷条件の同期電動機では、界磁単独の磁束と電機子反作用を考慮した電機子磁束との位相差がほぼ零となる。この状態から負荷が掛かっても回転速度の低下はないが、上記両磁束の位相差、すなわち( オ )が増大してトルクが発生する。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

    (ア)    (イ)   (ウ)   (エ)   (オ)

  1. 逆起電力  電源電圧 同期速度 滑り   負荷角
  2. 誘導起電力 逆起電力 回転磁界 二次抵抗 負荷角
  3. 逆起電力  電源電圧 定格速度 二次抵抗 力率角
  4. 誘導起電力 逆起電力 同期速度 滑り   負荷角
  5. 逆起電力  電源電圧 回転磁界 滑り   力率角

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説    

( ア )と( イ )は「逆起電力・電源電圧」の組み合わせか、「誘導起電力・逆起電力」の組み合わせになっています。

直流機を発電機として使う場合は、フレミングの右手の法則によって発生した誘導起電力を外部負荷につなぎ、外部負荷の両端に逆起電力が生じます。一方、直流機を電動機として使う場合は、外部の電源からの電源電圧により、電動機側に逆起電力が発生します。

今回は電動機の話をしているので、( ア )と( イ )には、それぞれ「逆起電力」と「電源電圧」が入ります。

( ウ )について、誘導電動機の分野で周波数と極数を使う式といえば、「同期速度」を求める式です。

  • Ns:同期速度[min-1]
  • p:磁極の数[極]
  • f:周波数[Hz]

( エ )は同期速度と回転速度を使うパラメータが問われていますが、これは「滑り」のことで、これも誘導電動機では覚えておきたい重要な式です。

  • s:滑り
  • Ns:同期速度(回転磁界の速度)[min-1]
  • N:回転速度(回転子の速度)[min-1]

ちなみに、問3の問題文に大きなヒントが含まれているので、試験当日はここを参照してもよかったかもしれません。電験三種の試験では、このように同年度の同科目で、ほかの問題からヒントを拾えることが珍しくありません。

( オ )には「負荷角」か「力率角」が入りますが、力率角はその言葉からもわかるように、電力Pに関係する角度θで、電圧Vと電流Iの間の角度を指します(P=VIcosθ)。

一方、負荷角は問題文にもあるように2つの磁束の位相差のことですが、一般的には内部誘導起電力Eoと電機子端子電圧Vの位相差と覚えておくとよいかもしれません。よって、( オ )には「負荷角」が入ります。

また、蛇足ですが、三相同期電動機の出力は以下の式で表すことができます。

  • P:三相同期機の出力[W]
  • Eo:内部誘導起電力[V] (相電圧実効値)
  • V:電機子端子電圧[V] (相電圧実効値)
  • X:同期リアクタンス[Ω]
  • δ:EoとVとの位相角[rad]

出力PはトルクTと角速度ωの積で表されるので、TはPに比例するため、問題文の通り、負荷角が増大すればトルクも大きくなります。

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