問 題
次の文章は、単相半波ダイオード整流回路に関する記述である。
抵抗とリアクトルとを直列接続した負荷に電力を供給する単相半波ダイオード整流回路を図1に示す。スイッチSを開いて運転したときに、負荷力率に応じて負荷電圧edの波形は図2の( ア )となり、負荷電流idの波形は図2の( イ )となった。次にスイッチSを閉じ、環流ダイオードを接続して運転したときには、負荷電圧edの波形は図2の( ウ )となり、負荷電流の流れる期間は、スイッチSを開いて運転したときよりも( エ )。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ)
- 波形2 波形4 波形3 長くなる
- 波形1 波形5 波形2 長くなる
- 波形1 波形5 波形3 短くなる
- 波形1 波形4 波形2 長くなる
- 波形2 波形5 波形3 短くなる
解 説
まず( ア )の選択肢を見ると、波形1と波形2の2択となっています。負荷電圧edが常に正または0の値しかとらなければ波形2が正しく、そうでなければ波形1が正しいことになります。ちなみに、どちらの波形でも、点線(と実線の一部)で描かれている規則的な波形は供給電圧vsの波形です。
ここでは( ア )を答える前に( イ )から考えるとわかりやすいと思いますので、先にこちらを扱います。( イ )の選択肢を見ると、波形4と波形5の2択となっています。ここでも点線(と実線の一部)で描かれている規則的な波形は供給電圧vsの波形です。
図1左上にあるダイオードが電流の向きを制御しているので、一見すると、vsが負になった瞬間に電流が流れなくなりそう(=波形4が正解っぽい)ですが、それは負荷側に抵抗Rしかない場合の話です。
しかし、今回は抵抗Rに加えてリアクトルLもあるので、電圧が負になっても電流は電圧に遅れて少しの間流れ続けます(その遅れ方はRとLの兼ね合い…つまり、力率次第となります)。よって、( イ )には「波形5」を選ぶのが正しいです。
また、( イ )が波形5だと決まれば、負荷電流idに合わせて負荷電圧edが発生するので、( ア )には「波形1」を選ぶのが正しいと判断できます。
( ウ )について、今度はスイッチが閉じたことにより、vsが正か負かによって電流が下図の赤矢印をたどるか青矢印をたどるかが変わります(vsが正なら赤、負なら青)。
vsが正の間はスイッチを閉じる前と同じ回路(上図赤矢印)で電流が流れるので、edの波形も変化しません。実際、この部分に関しては波形2も波形3も( ア )に入る波形1と一緒です。
一方、vsが負になると青矢印の通りに電流が流れますが、このときにedがvsの正反対になるか(波形3)、それとも0になるのか(波形2)というのがこの問題の肝です。
結論から先にいうと、このときedは0になるので、( エ )には「波形2」が入ります。電流idが流れているのにedが0になるのはおかしい、と思った方は、その通りです。ですが、実はedは0ではなく、「ほぼ0」と表現するのが正確です。
ダイオードの役割は整流であり、それ自体が抵抗となって熱を生じてしまうと目的が変わってしまいます。そのため、ダイオードの抵抗はほぼ0で、ひいてはダイオード端子間の電圧もほぼ0となっています。先ほどの赤矢印のとき、vsとedが一致したのもそのためです。
本来なら、edと「図1左上のダイオードの端子間電圧」の和がvsになるはずですが、端子間電圧がとても小さいので、これを無視してvs=edとして考えています。以上から、( エ )は「波形2」となります。
最後の( オ )について、スイッチが開いているときはvsが負になったあとも少しだけ負荷電流が流れていましたが、スイッチを閉じた場合には上図青色矢印のルートを電流が流れることができるようになるので、期間は長くなります。よって、( オ )には「長くなる」が入ります。
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