問 題
図1は、単相インバータで誘導性負荷に給電する基本回路を示す。負荷電流ioと直流電流idは図示する矢印の向きを正の方向として、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 出力交流電圧の1周期に各パワートランジスタが1回オンオフする運転において、図2に示すように、パワートランジスタS1~S4のオンオフ信号波形に対して、負荷電流ioの正しい波形が(ア)~(ウ)、直流電流idの正しい波形が(エ)、(オ)のいずれかに示されている。
その正しい波形の組合せを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (ア)と(エ)
- (イ)と(エ)
- (ウ)と(オ)
- (ア)と(オ)
- (イ)と(オ)
(b) 単相インバータの特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 図1は電圧形インバータであり、直流電源Eの高周波インピーダンスが低いことが要求される。
- 交流出力の調整は、S1~S4に与えるオンオフ信号の幅T/2を短くすることによって交流周波数を上げることができる。または、Eの直流電圧を高くすることによって交流電圧を高くすることができる。
- 図1に示されたパワートランジスタをIGBT又はパワーMOSFETに置換えてもインバータを実現できる。
- ダイオードが接続されているのは負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源に戻すためであり、さらにダイオードが導通することによって得られる逆電圧でパワートランジスタを転流させている。
- インダクタンスを含む負荷としては誘導電動機も駆動できる。運転中に負荷の力率が悪くなると、電流がダイオードに流れる時間が長くなる。
解 説
(a)
負荷電流ioについて、まず図2の最初の時間帯はS1とS4がオンでS2とS3がオフになっていることから、下図の青矢印の軌跡を電流が流れます。これは図中に記入されている負荷電流ioと同じ向きに流れます。
また、その後はスイッチが反転して、S2とS3がオンでS1とS4がオフとなるため、赤矢印の軌跡を電流が流れます。これは図中に記入されている負荷電流ioとは逆向きに流れていることがわかります。
よって、図2の(ア)、(イ)、(ウ)のうち、S1とS4がオンのときに負荷電流ioが上昇し、S2とS3がオンのときに負荷電流ioが減少している(ア)が正しい選択肢です。
ちなみに、(ア)は最初少しの間、負荷電流ioが負の値をとっていますが、これはコイルのインダクタンスにより、電流の反応が少し遅れるためで、その間は整流ダイオードを通って電流が図の向きとは逆向きに流れます。
続いて直流電流idについて考えます。直流電流idは青矢印のときでも赤矢印のときでも基本的には図中に記入されている向きと一致しています。
ただし、青矢印から赤矢印に切り替わる瞬間を考えると(つまり図2でいうとT/2のタイミング)、青矢印の電流が流れなくなるばかりか、S2とS3のところにある整流ダイオードを通って電流が逆流するので、結果的に直流電流idは急に負となります。
その後は電流が順当に流れ始めるので、そのうち正に転じることになります。また、赤矢印から青矢印に切り替わる瞬間を考えても(つまり図2でいうとTのタイミング)、同様の現象が起きるので、直流電流idはT/2の周期で(エ)のような軌跡を描きます。
よって、ioが(ア)、idが(エ)となるので、正解は(1)です。
(b)
(4)の前半は正しい記述ですが、後半が間違っています。
負荷のインダクタンスにエネルギーが蓄えられると、高電流が流れたり高電圧が生じたりして、トランジスタが壊れます。そうならないように余計な電流を直流電源に返してトランジスタを保護するのが、環流ダイオードの役割です。
よって、ダイオードが接続されているのは負荷のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを直流電源に戻すためといえますが(選択肢(4)の前半部分)、ダイオードが導通したとしても、その逆電圧でパワートランジスタが転流するわけではありません(選択肢(4)の後半部分)。
パワートランジスタの仕組みは、ベースに小さな電流が流れると、コレクタ-エミッタ間に大きな電流が流れるというものです。よって、ダイオードが導通している間(反対向きに電流が流れている間)は、パワートランジスタはオンになりません。
以上から、正解は(4)となります。
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