ビル管理士試験 2021年 問67 問題と解説

 問 題     

図は、蒸気圧縮冷凍サイクルにおける冷媒の標準的な状態変化をモリエル線図上に表したものである。圧縮機の出口直後に相当する図中の状態点として、最も適当なものは次のうちどれか。

 

 

 

 

 

正解 (1)

 解 説     

モリエル線図は示されているものの、それ以外の情報量が少ないため、難易度の高い設問だといえます。モリエル線図自体があまり頻出ではないので、高得点を狙っている受験者の方以外は、本問を捨て問題扱いにしても仕方ないと思います。

そこで、以下では詳細な解説をしますが、さらっと読んでみて難しいと感じたなら、とりあえず後回しにしてほかの頻出問題の対策を優先してください。


下図は、蒸気圧縮式冷凍機を図示したものです。冷媒はこの中を「圧縮機 → 凝縮器 → 膨張弁 → 蒸発器 → 圧縮機 → …」というサイクルで廻っています(もちろん、サイクルなのでどこがスタートというわけではありません)。

ちなみに、上図左側のア~オは問題の図(上図右側)のア~オと対応させていますが、これは以下の解説のように考えた結果わかることなので、この段階では気にしなくて大丈夫です。

蒸気圧縮式冷凍機の各工程と比エンタルピーや圧力の変化は以下の通りです。

まず、圧縮機ではガス化した冷媒を圧縮します。このとき、冷媒の比エンタルピーと圧力が上がります。よって、比エンタルピーと圧力が最も高い「ア」が圧縮機の出口直後に相当します。

この時点で正解は(1)だと判断できますが、以下、ほかの部分についても解説を続けます。

続く凝縮器では、冷媒を液化させます。ここでは比エンタルピーは低下しますが、圧力変化はありません。モリエル線図でいえば、凝縮器の入口が「ア」、途中で「イ」を経て、出口では「ウ」となっています。

そのあとの膨張弁は、液化した冷媒をその名の通り膨張させます。膨張する分、圧力は低下しますが、比エンタルピーに変化はありません。モリエル線図では、膨張弁によって「ウ」が「エ」に移ります。

最後の蒸発器では、液体の冷媒をガス化(蒸発)させます。ガス化は冷媒が周囲の熱を奪って行われるので、この段階が冷凍機としてのメインの働きをしています。また、これは凝縮器で液化させたときの反対なので、比エンタルピーは増加しますが、圧力変化はありません。モリエル線図では、蒸発器によって「エ」が「オ」に移ります。

このあと、圧縮機に戻ってサイクルが1周します。

以上から、正解は(1)となります。

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