ビル管理士試験 2021年 問26 問題と解説

　問 題　　　　　

熱中症に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1. 熱けいれんは、大量に発汗した際、水分のみを大量に摂取することによって起きる。
2. 熱疲労では、大量の発汗により体内の水分、塩分が不足し、臓器の機能低下が起きる。
3. 熱失神はもっとも重い熱中症であり、体温は異常に上昇する。
4. 皮膚疾患や重度の日焼けのときには発汗作用は低下するので、注意が必要である。
5. 熱射病の治療においては、冷やしすぎに注意する必要がある。

 

 

 

 

 

　解 説　　　　　

(1)で、汗をかけば身体から水分と塩分が失われます。この状態で塩分を摂取せずに水分だけを摂取すると、血液中の塩分濃度が薄まってしまい、けいれんが起こります。これが熱中症の一つ、熱けいれんです。よって、(1)は正しいです。

(2)で、熱疲労は、多量の発汗により体内の水分や塩分が不足することに加え、全身的な循環不全による重要諸臓器の機能低下によって起こります。よって、(2)も正しいです。

(3)で、熱失神は、皮層血管の拡張に伴う血圧低下による一過性の意識喪失のことです。頭頸部が直射日光などにさらされたことにより末梢血管の拡張を生じることによって起こります。

熱失神は熱中症の中では中程度の症状として扱われています。最も重度の症状となるのは、(5)の熱射病です。熱射病の症状は、体温上昇による中枢神経系機能の異常です。

ちなみに、重症度としては、軽いものから重いものの順に、「熱失神 ＜ 熱けいれん ＜ 熱疲労 ＜ 熱射病」の順番となります。

よって、(3)の文章は「熱失神」が誤りで、これを「熱射病」に直すと正しい文章となります。

(4)は記述の通りです。皮膚疾患や日焼けによって、皮膚が乾いて汗が出にくくなることがあります。そうすると、発汗による熱放散ができなくなるので、熱中症のリスクが高くなります。

(5)で、熱射病の症状は(3)の解説の通り、体温上昇による中枢神経系機能の異常です。体温調節機能が働かなくなると、意識不明などの危険な状態となるので、これは重度の熱中症です。熱射病の治療は、まず全身の冷却が第一ですが、冷やし過ぎには十分に注意する必要があるので、(5)も正しい記述です。

以上から、正解は(3)となります。