問 題
熱移動に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
- 一般に、同一材料でも内部に水分を多く含むほど、熱伝導率は大きくなる。
- 固体内を流れる熱流は、局所的な温度勾配に熱伝導抵抗を乗じて求められる。
- 一般に、密度が大きい材料ほど、熱伝導率は大きくなる。
- 中空層の熱抵抗は、一定の厚さ(2~5cm)までは厚さが増すにつれて増大するが、それ以上ではほぼ一定となる。
- ガラス繊維などの断熱材の熱伝導率が小さいのは、繊維材によって内部の空気の流動が阻害されるためである。
解 説
(1)は正しく、水分を多く含むほど熱伝導率は大きくなります。
というのも、空気は熱伝導率がかなり低いです。ペアガラスは2枚のガラスの間に空間を設けていますが、これによって断熱を実現するという仕組みです。また、断熱材にはその中に多くの空間があり、やはり空気が熱を通しにくいことを利用しています。
よって、同一材料でも内部に水分を多く含んでしまうと、空気があった場所が水分に取って代わってしまうので、熱伝導率は大きくなります。
(2)が誤っています。これに関して、知識として押さえておきたい式が2つあります。ひとつは、熱伝達率と熱伝導抵抗との関係式で、もうひとつは、熱貫流量(熱流)の式です。
まず、熱伝達率と熱伝導抵抗は逆数の関係となります。
- K:熱貫流率(熱伝達率) [W/(m2・K)]
- R:熱貫流抵抗(熱伝導抵抗) [m2・K/W]
次に、熱貫流量(熱流)Q[W/m2]は以下の式から算出できます。
- Q:熱貫流量(熱流) [W/m2]
- K:熱貫流率(熱伝達率) [W/(m2・K)]
- θ:内外の温度差 [K]
以上を合わせると、(2)は「熱伝導抵抗」を「熱伝達率」に直すか、「乗じて」を「除して」に直す必要があります。
(3)は正しく、密度が大きい材料ほど、熱伝導率は大きくなる傾向があります。
熱伝導率は一般的には、固体で大きく、液体は普通で、気体は小さいです。水の入ったお鍋に火をかけたとき、鍋(固体)は触れないほど熱く、水(液体)は徐々にお湯になっていき、周辺の空気(気体)はほんのり温かくなることからも、この関係が予想できます。
密度が大きいということは熱を伝えやすい固体がぎゅっと詰まっているということなので、熱伝導率は大きくなります。
(4)も正しいです。空気は優れた断熱効果を有していて、一定の厚さ(2~5cm)までは厚いほど熱抵抗が大きくなるので、厚いほど断熱効果が大きくなります。しかし、それ以上では熱抵抗がほぼ変わらず、断熱効果が頭打ちになります。
(5)も正しいです。記述の通り、ガラス繊維が断熱材となる理屈は、繊維材によって内部の空気が流動できずに留まることで、熱の移動が少なくなるためです。
以上から、正解は(2)となります。
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