ビル管理士試験 2021年 問49 問題と解説

 問 題     

下の図は、厚さの異なるA、B、C部材で構成された建築物外壁における定常状態の内部温度分布を示している。この図に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

  1. A、B、C部材のなかで、最も熱伝導率が大きい部材はB部材である。
  2. 熱伝達率は、屋外側の方が室内側より大きい。
  3. B部材が主体構造体であるとすれば、この図は内断熱構造を示している。
  4. 壁表面近傍で空気温度が急激に変化する部分を境界層という。
  5. A、B、C部材のなかで、部材を流れる単位面積当たりの熱流量が最も大きいのはA部材である。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説     

(1)について、熱伝導率は熱の伝わりやすさを表し、その単位は[W/(m・K)]です。この問題で熱伝導率の大小を知りたい場合は、図の各部材を通過する直線の傾きに注目します。

C部材のように傾きが急であれば、C部材の左側と右側で温度差が激しいということなので、C部材があるおかげで断熱効果に優れているといえます。断熱効果が優れるということは、つまり、C部材自身は熱を通しにくいということなので、熱伝導率が小さいといえます。

反対に、B部材はA部材やC部材よりも傾きが小さい(=左右の温度差が小さい)ので、断熱効果が弱い、つまり、熱伝導率が大きいです。

よって、(1)は正しい記述です。

(2)で、熱伝達率も熱伝導率と同じく熱の伝わりやすさの指標になりますが、熱伝導率が物体中を「線」として進む熱を考えるのに対し、熱伝達率は壁表面と空気との間における熱の伝わりを「面」で捉えます。

つまり、熱伝導率は距離が遠ければその分、熱は伝わりにくくなる、というような考え方をしますが、熱伝達率の場合は壁と空気との接触面における熱の伝わりやすさについてだけ取り扱えるパラメータです。ちなみに、熱伝達率の単位は[W/(m2・K)]です。

屋外側と室内側の熱伝達率を比べると、一般的に屋外側のほうが大きいです。

これはイメージするとわかりやすいのですが、屋外は風が吹いているので、外壁が室内から伝わってきた熱で少し温かくなったとしても、それがすぐに風で流されてしまいます。すると、外壁は冷えるので、また室内から熱が流れてきやすくなる…といった具合です。

もし風が吹いていない場合でも、外壁は室内の壁に比べて凹凸があることが多いので、表面積が大きく、やはり熱が拡散しやすい環境にあるため、屋外側は室内側に比べると熱伝達率が大きくなります。

よって、(2)も正しい記述です。

(3)について、B部材が主体構造体である場合、屋外側にあるA部材が断熱材なら「外断熱」で、室内側であるC部材が断熱材なら「内断熱」となります。(1)の解説の通り、C部材は両端の温度差が大きく、これが断熱効果を持っているので、今回はC部材が断熱材です。

よって、この図は内断熱構造を示しているので、(3)も正しい記述です。

(4)も記述の通りです。図でいうと、A部材のすぐ左側とC部材のすぐ右側の、カーブしているところが境界層になります。

(5)に関して、熱流量とは、単位時間あたりに流れる熱エネルギー量[W]のことです。定常状態であれば、どのような部材であっても、そこを流れている熱流は一定になります。

仮に熱流量が異なると、ある場所では熱エネルギーがたくさん留まり、ある場所では熱エネルギーが失われやすいということになりますが、それでは熱エネルギーの流れ(=熱流)にムラができて、定常状態とは呼べなくなります。

よって、(5)の「熱流量が最も大きいのはA部材」というのは誤りで、A、B、C部材のどれも変わりません。

以上から、正解は(5)となります。

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