電験三種 R6年度上期 機械 問15 問題と解説

 問 題     

定格周波数60Hz、6極の三相巻線形誘導電動機があり、二次巻線を短絡して定格負荷で運転したときの回転速度は1170min-1である。この電動機について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

ただし、電動機の二次抵抗値が一定のとき、滑りとトルクは比例関係にあるものとする。

(a) この電動機を定格負荷の80%のトルクで運転する場合、二次巻線が短絡してあるときの滑りの値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 0.015
  2. 0.02
  3. 0.025
  4. 0.03
  5. 0.04

(b) この電動機を定格負荷の80%のトルクで運転する場合、二次巻線端子に三相抵抗器を接続し、二次巻線回路の1相当たりの抵抗値を短絡時の2.5倍にしたときの回転速度[min-1]の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 980
  2. 1110
  3. 1140
  4. 1170
  5. 1200

 

 

 

 

 

正解 (a)-(2), (b)-(3)

 解 説 (a)   

誘導機の同期速度Nsと滑りsの計算式は以下のように表すことができます。これらは重要公式として必ず押さえておきたい式です。

  • N:回転速度(回転子の速度) [min-1]
  • s:滑り (単位なし)
  • Ns:同期速度 [min-1]
  • p:磁極の数 [極]
  • f:周波数 [Hz]

本問の誘導電動機は定格周波数60Hz、6極であるので、まず(1)式より、定格時(短絡条件)の同期速度Nsは次の(3)式のようになります。

また、定格時(短絡条件)の回転速度Nが1170[rpm]なので、(3)式の結果を(2)式に代入すると、滑りsは次の(4)式のように表されます。

ただし、これが答えではありません。問われているのは定格時の滑りsではなく、定格負荷の80%のトルクで運転する場合の滑りs’の値です。

ここで、問題文によると「二次抵抗値が一定のとき、滑りとトルクは比例関係」ということなので、求めたい滑りs’の値は、(4)式で求めた値の80%であると判断できます。よって、次の(5)の通り計算できます。

以上から、正解は(2)です。

 解 説 (b)   

巻線形誘導電動機では、一定のトルクを生じるための二次巻線抵抗r2と滑りsとの間には比例関係があり、このような特性を比例推移といいます。この特性は、巻線形誘導電動機の始動トルクの改善や速度制御に広く利用されています。

  • r2:二次巻線抵抗 [Ω]
  • s:滑り
  • k:任意の倍数
  • const.:一定、という意味(コンスタントの略)

本問の場合、抵抗値を2.5倍にする前の滑りの値は、設問(a)よりs’=0.02です。そして、上記の(6)式の通り抵抗値を2.5倍にすると滑りも2.5倍となるため、抵抗値を2.5倍にした後の滑りの値sbは次の(7)式のように表されます。

また、同期速度Nsについては、もともとの条件から周波数も極数も変わらないので、設問(a)の(3)式で求めたNs=1200[min-1]がそのまま使えます。

よって、求めたい回転速度Nbは次のように計算することができます。

以上から、正解は(3)となります。

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