電験三種 R6年度上期 法規 問11 問題と解説

 問 題     

変電所から三相3線式1回線の専用配電線で受電している需要家がある。この配電線路の電線1条当たりの抵抗及びリアクタンスの値は、それぞれ3Ω及び5Ωである。

この需要家の使用電力が8000kW、負荷の力率が0.8(遅れ)であるとき、次の(a)及び(b)の問に答えよ。

(a) 需要家の受電電圧が20kVのとき、変電所引出口の電圧[kV]の値として、最も近いのは次のうちどれか。

  1. 21.6
  2. 22.2
  3. 22.7
  4. 22.9
  5. 23.1

(b) 需要家にコンデンサを設置して、負荷の力率を0.95(遅れ)に改善するとき、この配電線の電圧降下の値[V]の、コンデンサ設置前の電圧降下の値[V]に対する比率[%]の値として、最も近いのは次のうちどれか。

ただし、この需要家の受電電圧[kV]は、コンデンサ設置前と同一の20kVとする。

  1. 66.6
  2. 68.8
  3. 75.5
  4. 81.7
  5. 97.0

 

 

 

 

 

正解 (a)-(3), (b)-(2)

 解 説 (a)   

まず、問題文で与えられた条件を使って三相3線式の1相分の等価回路を描くと、以下のように表すことができます。

  • Es:送電端電圧(1相あたり) [V]
  • Er:受電端電圧(1相あたり) [V]
  • I:線電流 [A]
  • R:抵抗(電線1条あたり) [Ω]
  • X:リアクタンス(電線1条あたり) [Ω]
  • cosθ:力率

上図より、需要家の使用電力P[W]を表す式を使うと、電流I[A]は次の(1)式のように算出することができます。

次に、三相3線式送電線における電圧降下の式は、以下の(2)式で表すことができます。これは(1)式と同様に重要公式としてそのまま覚えておきたい知識ですが、もし導出方法を知りたい場合は三相3線式送電線の電圧降下のページを参照してください。

  • Vd:電圧降下 [V]
  • Vs:送電端電圧 [V]
  • Vr:受電端電圧 [V]
  • I:線電流 [A]
  • R:抵抗(電線1条あたり) [Ω]
  • X:リアクタンス(電線1条あたり) [Ω]
  • cosθ:負荷の力率

よって、電圧降下Vd[V]は次に示す(3)式によって計算できます。

(3)式の結果を再び(2)式に代入すると、求めたい送電端電圧(変電所引出口の電圧)Vs[kV]を算出することができます。

以上から、正解は(3)となります。

 解 説 (b)   

設問(b)ではコンデンサによって力率が0.95に上昇していますが、これは無効電力が変化しただけであり、有効電力Pは変化しません。また、問題文より受電電圧も変わっていません。

そのため、力率改善後の電流I'[A]は、設問(a)の(1)式と同じ式を使って次の(5)式のように計算することができます。

続いて、電圧降下Vd‘[V]についても、設問(a)で使った式から次の(6)式のように求めることができます。

よって、(3)式と(6)式から、この配電線の電圧降下Vd‘[V]の、コンデンサ設置前の電圧降下Vd[V]に対する比率[%]は、次のように計算することができます。

以上から、正解は(2)となります。

コメント