問 題
次の文章は、「電気設備技術基準の解釈」に基づく高圧連系時の系統連系用保護装置に関する記述である。
「逆変換装置を用いて連系する場合」において、「逆潮流有りの場合」の保護リレー等は、次によること。
表に規定する保護リレー等を受電点その他異常の検出が可能な場所に設置すること。
※1:分散型電源自体の保護用に設置するリレーにより検出し、保護できる場合は省略できる。
※2:( ア )異常低下検出用の不足電圧リレーにより検出し、保護できる場合は省略できる。
※3:構内低圧線に連系する場合であって、分散型電源の出力が受電電力に比べて極めて小さく、( エ )検出装置等により高速に( エ )を検出し、分散型電源を停止又は解列する場合又は地絡方向継電装置付き高圧交流負荷開閉器から、零相電圧を( ウ )リレーに取り込む場合は、省略できる。
※4:専用線と連系する場合は、省略できる。
※5:転送遮断装置は、分散型電源を連系している配電線の配電用変電所の遮断器の遮断信号を、電力保安通信線又は電気通信事業者の専用回線で伝送し、分散型電源を解列することができるものであること。
※6:( エ )検出装置は、能動的方式を1方式以上含むものであって、次の全てを満たすものであること。
- 系統のインピーダンスや負荷の状態等を考慮し、必要な時間内に確実に検出することができること。
- 頻繁な不要解列を生じさせない検出感度であること。
- 能動信号は、系統への影響が実態上問題とならないものであること。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (ア) (イ) (ウ) (エ)
- 発電電圧 系統側 電流差動 単独運転
- 発電電圧 系統側 地絡過電圧 逆充電
- 系統電圧 発電側 電流差動 逆充電
- 系統電圧 発電側 地絡過電圧 単独運転
- 発電電圧 系統側 地絡過電圧 単独運転
解 説
問題文に該当するのは、「電気設備技術基準の解釈」第229条(高圧連系時の系統連系用保護装置)です。
解説に入る前に、分散型電源の説明を簡単にしておきます。送配電事業者から供給されるのとは別に小規模の発電設備を設置するとき、この2つ目(またはそれ以上)の電源のことを分散型電源といいます。たとえば小規模の太陽光発電設備は、まさに分散型電源の代表例といえます。
( ア )と( イ )に関して、全ての選択肢で一方に「発電」を入れると、他方に「系統」を入れることになります。ちなみに、系統側が送配電事業者から供給されるほう(商用系統)で、発電側が自前の分散型電源のことです。
結論からいえば、( ア )には「発電電圧」が入ります。
分散型電源の故障時に分散型電源の出力端電圧に異常な変動が見られた場合、これを検出して分散型電源を解列するため、過電圧リレー(発電電圧異常上昇検出用)と不足電圧リレー(発電電圧異常低下検出用)が必要となります。
ここで、正解を選ぶ大きなヒントになるのは、補足事項の欄にある※1の記述です。「※1:分散型電源自体の保護用に設置するリレーにより検出し、保護できる場合は省略できる。」と書かれていることから、商用系統側ではなく発電側の話であると判断することができます。
よって、( ア )が「発電電圧」なので、( イ )には「系統側」が入ることになります。
( ウ )に関して、表を見ると( ウ )は系統側地絡事故を検出するためのリレーが問われていますが、これには地絡過電圧リレーが用いられます。
また、※3の文中には「零相電圧を( ウ )リレーに取り込む」とあり、零相電圧(ゼロ・シーケンス電圧)を検出する代表的なリレーは、地絡過電圧リレーです。こちらから判断することもできます。
よって、( ウ )には「地絡過電圧」が入ります。
( エ )に関して、選択肢には「単独運転」と「逆充電」があるので、まずはこれらの用語の解説をします。
単独運転とは、分散型電源を連系している電力系統が事故等によって系統電源と切り離された状態において、当該分散型電源が発電を継続し、線路負荷に有効電力を供給している状態のことをいいます。
つまり、分散型電源が発電はしているものの、系統が事故で切り離されているため大きな負荷につながっていない(線路負荷くらいしか行き場がない)状態で、電力の供給と需要が一致せずに感電や機器の損傷の危険度が高い状態といえます。
逆充電とは、分散型電源を連系している電力系統が事故等によって系統電源と切り離された状態において、分散型電源のみが連系している電力系統を加圧し、かつ、当該電力系統へ有効電力を供給していない状態のことをいいます。
ここで、逆充電は低圧において問題となることがある一方で、高圧では影響力が小さいためほとんど問題となりません。しかし、単独運転は低圧・高圧に関わらず重大な危険性があるので、早急にこれを検出し、分散型電源を停止したり解列したりする必要があります。
よって、今回は高圧の話なので、( エ )には「単独運転」が入ると判断することができます。
以上から、
- ア:発電電圧
- イ:系統側
- ウ:地絡過電圧
- エ:単独運転
となるので、正解は(5)です。
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