問 題
ある需要端の負荷に対し、水力発電所1か所と重油専焼汽力発電所1か所によって電力を供給する場合において、次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a) 水力発電所の最大使用水量20m3/s、総落差200m、損失水頭7m、水車と発電機の総合効率85%、年間の設備利用率60%としたとき、この発電所の年間発電電力量[GW・h]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 15
- 30
- 170
- 175
- 200
(b) 需要端の負荷に供給する最大電力が100MW、年負荷率60%の場合、汽力発電所における重油の年間の消費量[kL]として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
ただし、この汽力発電所の発電端熱効率は40%で運転出力に関わらず一定とする。使用する重油の発熱量は39100kJ/Lとし、発電所から需要端までの送電損失、発電所内損失は無視するものとする。
- 13000
- 33000
- 82000
- 114000
- 120000
解 説
(a)
問われているのは年間発電電力量Eの値です。これは、次の式で表すことができます。
![]()
- E:年間発電電力量 [kW・h]
- P:発電出力 [kW]
- u:年間の設備利用率
- T:1年の総時間 8760 [h]
- uT:1年間の設備利用時間 [h]
上記の(1)式において、問題文よりu=0.6(60%)であり、Tは24時間×365日でT=8760[h]となります。よって、Pがわかれば求めたいEの値が計算できます。
ここで、水力発電は水の位置エネルギーを電気エネルギーに変えるものなので、発電出力Pは次の式で表すことができます。
![]()
- P:発電出力 [kW]
- Q:使用水量 [m3]
- g:重力加速度 9.8 [m/s2]
- H:有効落差 [m]
- ηT:水車効率 [%]
- ηG:発電機効率 [%]
上記の(2)式において、使用水量は20[m3]であり、有効落差Hは総落差と損失水頭の差に相当するので、200-7=193[m]となります。また、効率については総合効率ηが問題文で与えられています。よって、η=ηTηG=0.85です。
よって、(2)式を使うと発電出力Pは次のように計算することができます。(なお、ここではできるところまで計算を進めていますが、あとで(1)式と合わせるところでまとめて計算しても構いません。)

続いて、(3)式の結果を(1)式に代入すると、年間発電電力量Eの値が求められます。

以上を踏まえて選択肢の中で最も近いものを選べばよいので、正解は(3)となります。
(b)
問われているのは汽力発電所における重油の年間の消費量[kL]です。解法の流れとしては、次のように考えていくのがわかりやすいと思います。
- 需要端で必要となる年間電力量E需要を計算する
- 汽力発電で供給する年間発電量E汽力を計算する
- 汽力発電の入力で必要な熱エネルギーE入力を計算する
- 重油の年間の消費量を計算する
まず、年間電力量E需要について考えると、最大電力が100[MW]で年負荷率が60[%]、1年の総時間が8760[h]なので、設問(a)の(1)式と同じように考えると次のように計算できます。

上記の(5)式と設問(a)の(4)式から、汽力発電で供給する年間発電量E汽力は以下の(6)式のようになります。

続いて、汽力発電の入力で必要な熱エネルギーE入力について考えます。すでに(6)式で汽力発電の発電量E汽力がわかっていて、問題文より発電端効率η=0.4と与えられているので、次のように計算することでE入力を算出することができます。

ただし、(7)式だと単位が[GW・h]となっていて、これは熱エネルギーの単位というより電力量の単位といえます。問題文の条件でまだ使っていない(これから使う)重油の発熱量の単位[kJ/L]のことを考えると、(7)式を[W]表記から[J]表記に変換しておく必要があります。
1[W・s]が1[J]なので、1[W・h]は3600[J]です。よって、(7)式の単位を変換すると、次の(8)式のように表すことができます。

以上で汽力発電の入力で必要な熱エネルギーがわかりました。最後に、(8)式と重油の発熱量から、重油の年間の消費量を計算します。

よって、正解は(3)となります。

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