問 題
三相変圧器の並行運転に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 各変圧器の極性が一致していないと、大きな循環電流が流れて巻線の焼損を引き起こす。
- 各変圧器の変圧比が一致していないと、負荷の有無にかかわらず循環電流が流れて巻線の過熱を引き起こす。
- 一次側と二次側との誘導起電力の位相変位(角変位)が各変圧器で等しくないと、その程度によっては、大きな循環電流が流れて巻線の焼損を引き起こす。したがって、Δ-YとY-Yとの並行運転はできるが、Δ-ΔとΔ-Yとの並行運転はできない。
- 各変圧器の巻線抵抗と漏れリアクタンスとの比が等しくないと、各変圧器の二次側に流れる電流に位相差が生じ取り出せる電力は各変圧器の出力の和より小さくなり、出力に対する銅損の割合が大きくなって利用率が悪くなる。
- 各変圧器の百分率インピーダンス降下が等しくないと、各変圧器が定格容量に応じた負荷を分担することができない。
解 説
変圧器の並行運転の条件として押さえておきたいのは、以下に示す5つの事柄です。なお、下記の各項目番号は選択肢の番号と一致しています。
- 極性が一致している
- 変圧比が一致している
- 位相変位(角変位)を各変圧器で等しくする
- 巻線抵抗と漏れリアクタンスとの比が等しい
- %インピーダンス降下が等しい
まず1つ目は、各変圧器の極性が一致していることです。各変圧器の極性が一致していないと、大きな循環電流が流れて巻線の焼損を引き起こすおそれがあります。
よって、(1)は正しい記述です。
2つ目は、各変圧器の変圧比が一致していることです。各変圧器の変圧比が一致していないと、負荷の有無に関わらず循環電流が流れることになり、巻線の過熱を引き起こします。
よって、(2)も正しい記述です。
3つ目は、一次側と二次側との誘導起電力の位相変位(角変位)を各変圧器で等しくすることです。つまりは、「Δ-Δ」と「Y-Y」との並行運転は可能ですが、「Δ-Δ」と「Δ-Y」の組み合わせや、「Δ-Y」と「Y-Y」の組み合わせでは並行運転が行えないということになります。
この理由は、位相変位の異なるものを用いると、前述の2項目と同様に大きな循環電流によって巻線が焼損するおそれがあるためです。
並行運転が可能な組み合わせかどうかは、Δの数とYの数が偶数か奇数かという点を判断基準にすれば良いです。「Δ-ΔとY-Y」や「Y-YとY-Y」などは、Δの数とYの数がともに偶数なので、これらは並行運転が可能です。一方、「Δ-ΔとΔ-Y」や「Y-YとΔ-Y」などは、Δの数とYの数がともに奇数なので、これらは並行運転ができません。
よって、(3)の記述のうち、「Δ-YとY-Yとの並行運転はできる」という部分が誤っています。
4つ目は、各変圧器の巻線抵抗と漏れリアクタンスとの比が等しいことです。これらの比が等しくないと、各変圧器の二次側に流れる電流に位相差が生じ、取り出せる電力が各変圧器の出力の和と比べて小さくなってしまい、出力に対する銅損の割合が大きくなってしまう(=効率が悪くなってしまう)ためです。
よって、(4)は正しい記述です。
最後の5つ目は、各変圧器の%インピーダンス降下が等しいことです。%インピーダンスが異なっていると、各変圧器が定格容量に応じた負荷を分担することができなくなってしまいます。
よって、(5)も正しい記述です。
以上から、正解は(3)となります。
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