電験三種 R5年度上期 電力 問10 問題と解説

 問 題     

地中送電線路の線路定数に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 架空送電線路の場合と同様、一般に、導体抵抗、インダクタンス、静電容量を考える。
  2. 交流の場合の導体の実効抵抗は、表皮効果及び近接効果のため直流に比べて小さくなる。
  3. 導体抵抗は、温度上昇とともに大きくなる。
  4. インダクタンスは、架空送電線路に比べて小さい。
  5. 静電容量は、架空送電線路に比べてかなり大きい。

 

 

 

 

 

正解 (2)

 解 説    

(1)について、線路定数には以下の4つの種類があり、これは地中送電線路/架空送電線路に関わらず共通です。よって、(1)の記述は正しいです。

  • 導体抵抗
  • 作用インダクタンス
  • 作用静電容量
  • 漏れコンダクタンス

(2)について、まずは表皮効果と近接効果の用語の確認をしておきます。

表皮効果とは、導体に交流電流を流したとき、電流密度が導体の表面で高くなり、表面から離れるにつれ低くなっていく現象です。

表皮効果が大きいと、導体の表面では電流が流れやすい一方、表面以外の部分(特に中央付近)の抵抗が高くなってしまうので、線路全体で考えると抵抗値は高くなってしまいます。よって、表皮効果は不都合な効果といえます。

近接効果とは、近い距離で平行に並ぶ2本の導線に交流電流が流れているとき、両者の電流の向きが同一方向であれば引力(引き合う力)が働き、電流の向きが反対方向であれば斥力(反発する力)が働きます。

この性質により、導体内の電流密度に偏りが生じます。具体的には、引力が働けば導体内の電流密度は相手の導体から近い側に偏り、斥力が働けば導体内の電流密度は相手の導体に遠いほうに偏ります。

このように導体内の電流密度に偏りが生じることで、線路全体の抵抗値は高くなってしまいます。よって、近接効果も表皮効果と同様、不都合な効果といえます。

以上から、交流の場合の導体の実効抵抗は、直流と比べると表皮効果や近接効果のせいで大きくなるので、(2)の最後の「小さくなる」が誤りだと判断できます。

(3)について、抵抗の特徴として、温度が高いほど抵抗値は上がり(電流を流しにくくなり)、温度が低いほど抵抗値は下がり(電流を流しやすくなり)ます。よって、(3)の記述は正しいです。

(4)と(5)について、地中送電線路は、同じ送電電圧の架空送電線路と比較して線路間の距離が近いため、作用インダクタンスは小さく、作用静電容量が大きくなります。よって、(4)も(5)も正しい文章です。

以上から、正解は(2)となります。

コメント

  1. 匿名 より:

    大変丁寧な解説ありがとうございます。

    一点、気になる点がございましたのでコメントさせていただきます。
    (2)の説明文中の引力、斥力が電流の向きに対して逆になっているようです。
    よければご確認の程お願い致します。

    • (管理人) より:

      そうですね、失礼しました。
      ご指摘どうもありがとうございます!