電験三種 R4年度下期 理論 問14 問題と解説

 問 題     

データ変換に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. アナログ量を忠実に再現するために必要な標本化の周期の上限は、再現したいアナログ量の最高周波数により決まる。
  2. 量子化において、一般には数値に誤差が生じる。
  3. 符号化では、量子化された数値が2進符号などのディジタル信号に変換される。
  4. ディジタル量は、伝送路の環境変化や伝送路で混入する雑音に強い。
  5. ディジタルオシロスコープで変化する電圧の波形を表示するには、その電圧をアナログ-ディジタル変換してからコンピュータでFFT演算を行い、その結果を出力する。

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

(1)について、ややマイナーな知識ですが、これは標本化定理に関する記述です。標本化定理とは、アナログ量を忠実に再現したい場合、そのアナログ量の最大周波数の2倍よりも高い周波数で標本化する必要があるという定理のことです。

よって、アナログ量を忠実に再現するために必要な標本化の周期の上限は、再現したいアナログ量の最高周波数次第となり、この値の2倍を超える値とすればよいので、(1)は正しいです。

(2)について、量子化とは、連続的な値を何段階かの値で近似することです。ディジタルは量子数(不連続な値)でしか扱えないので、アナログをディジタルに変換する際は、連続的なアナログ値を最も近いディジタルの値に近似しています。

よって、量子化においては、わずかな誤差はどうしても生じやすいため、(2)も正しいです。

(3)について、アナログをディジタルに変換する際には、(2)の量子化に続いて符号化が行われます。量子化によって数値化されたものを、0と1の2進符号に変換することを符号化といいます。よって、(3)も正しいです。

(4)について、ディジタル量はアナログ量と違って連続数ではない(=量子数)ので、雑音を拾いにくいというメリットがあります。そのため、伝送路の環境変化や伝送路で混入する雑音に強いといえるので、(4)も正しいです。

(5)について、ディジタルオシロスコープで変化する電圧の波形を表示するには、その電圧をアナログ-ディジタル変換し、その後、マイクロプロセッサで波形の読み出しや信号処理、表示制御などを行い、最後にディスプレイでその結果を出力します。

よって、(5)の「コンピュータでFFT演算を行い」が誤りで、たとえば「マイクロプロセッサで処理を行い」などのように書くと正しい記述となります。

なお、FFT(Fast Fourier Transformation:高速フーリエ変換)は、周波数解析に用いられる手法で、時間軸の信号を複数の周波数成分に分け、周波数軸のスペクトルに変換します。これは、機器の異音を検知したり、地震による振動を観測する際などに役立つ手法です。

ディジタルオシロスコープにおいて、このFFTが必要となるシーンは特にありません。

以上から、正解は(5)となります。

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