電験三種 R4年度下期 理論 問12 問題と解説

 問 題     

図のように、z軸の正の向きに磁束密度B=1.0×10-3Tの平等磁界が存在する真空の空間において、電気量e=-4.0×10-6Cの荷電粒子がyz平面上をy軸から60°の角度で①又は②の向きに速さv[m/s]で発射された。

この瞬間、荷電粒子に働くローレンツ力Fの大きさは1.0×10-8N、その向きはx軸の正の向きであった。

荷電粒子の速さvに最も近い値[m/s]とその向きの組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

ただし、重力の影響は無視できるものとする。図中の⦿は、紙面に対して垂直かつ手前の向きを表す。

  • 速さv  向き
  1. 2.5   ①
  2. 2.9   ①
  3. 5.0   ①
  4. 2.9   ②
  5. 5.0   ②

 

 

 

 

 

正解 (5)

 解 説    

磁束密度B[T]の磁界中に電気量e[C]の荷電粒子を置き、磁界の向きとは垂直の方向に速さv[m/s]の初速度を与えると、この荷電粒子は初速度の向きとも磁界の向きとも垂直になる方向の電磁力F[N]を受けます。

磁界の中を運動する荷電粒子が受けるこの電磁力F[N]のことをローレンツ力といい、以下の式で表されます。

    

  • F:ローレンツ力 [N]
  • B:磁束密度 [T]
  • e:荷電粒子の電荷 [C]
  • v:荷電粒子の速度 [m/s]

以上は重要公式として覚えておいてほしいのですが、上式の注意点として、速度vは磁界の向きとは垂直であるという点です。本問ではvがBに対して斜めになっているので、(1)式のvを下図のvyに置き換えて考える必要があります。

(2)式に問題文で与えられた数値を代入すると、まずはvのy成分を求めることができます。

よって、上図の通り、vが①であっても②であっても、vとvyのなす角は60°なので、vの大きさは次のように計算できます。

これで、選択肢は(3)と(5)に絞られます。

次に、荷電粒子が発射された向きについて、これはフレミングの左手の法則から考えるとよいです。

ただし、フレミングの左手の法則は電流、磁界、電磁力の3つのパラメータである点に注意してください。電流は正電荷の流れを表していますが、今回は荷電粒子の電気量が負なので(=負電荷)、電流の向きとはちょうど反対になります。

【フレミングの左手の法則】

  • 中指  :電流の向き(負電荷の向きは電流の反対向き)
  • 人差し指:磁界の向き
  • 親指  :電磁力(ローレンツ力)の向き

今回の場合、人差し指(磁界)を画面上に向け、親指(ローレンツ力)を画面手前に向けます。そうすると、中指(電流)は画面右を向くため、これが電流の向きです。そして今回は負電荷なので、画面左向きが荷電粒子のy成分の速度vyの進む方向となります。

よって、vyが画面左向きなのであれば、vは画面左下の②になると判断することができます。

以上から、速さvは「5.0」で、向きは「②」であるため、正解は(5)となります。

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