電験三種 R4年度下期 機械 問6 問題と解説

 問 題     

次の文章は、小形交流モータに関する記述である。

モータの固定子がつくる回転磁界中に、永久磁石を付けた回転子を入れると、回転子は回転磁界( ア )で回転する。これが永久磁石同期モータの回転原理である。

永久磁石形同期モータは、回転子の構造により、( イ )磁石形同期モータと( ウ )磁石形同期モータに分類される。

( イ )磁石形同期モータは、構造的に小型化・高速化に適しており、さらに( エ )トルクが利用できる特徴がある。

( エ )トルクは、固定子と回転子の鉄心(電磁鋼板)との間に働く回転力のことである。この回転力のみを利用したモータは、永久磁石形同期モータに比べて、材料コストが( オ )という特徴がある。

上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  •   (ア)    (イ)  (ウ)    (エ)    (オ)
  1. より低い速度  表面  埋込  リラクタンス  低い
  2. より低い速度  埋込  表面  コギング    低い
  3. と同じ速度   埋込  表面  リラクタンス  高い
  4. と同じ速度   埋込  表面  リラクタンス  低い
  5. と同じ速度   表面  埋込  コギング    高い

 

 

 

 

 

正解 (4)

 解 説    

この問題は、小形交流モータの種類と特徴について問われています。小形交流モータが出題テーマとなるのは珍しいため、これは知識問題というよりも、問題文と選択肢を見比べて推測・判断していく問題だといえそうです。

( ア )について、直後に「これが永久磁石同期モータの回転原理である」と書かれているので、ここは同期機の特徴を答えればよいと解釈できます。

同期機とは、回転子が回転磁界の回転速度と同期して回転する交流機のことなので、( ア )には「と同じ速度」を入れるのが適切だとわかります。

( イ )と( ウ )は、一方に「表面」が、他方に「埋込」が入ります。( ウ )の特徴はどこにも書かれていないため、( イ )の特徴から答えを判断することになります。

ここで、表面磁石形同期モータと埋込磁石形同期モータの違いは、永久磁石がロータの外周に貼り付けられているか、ロータの内部に埋め込まれているかという点です。

外周に貼り付けられている場合は、その分構造的に大きくなる上、高速回転すると磁石が割れたり脱落したりする危険があります。そのため、表面磁石形同期モータは小型化や高速化には向いていません。

そのため、( イ )には「埋込」が、( ウ )には「表面」が入ると判断することができます。

( エ )については用語の意味を理解していれば簡単である一方、知らなければ考えても正解がわかりません。しかし、これらは頻出事項ではない上、( エ )以外の選択肢が合っていれば正解の選択肢は一つに絞れるので、そこまで気にしなくていいと思います。

リラクタンストルクとは、固定子と回転子の鉄心との間に働く回転力のことで、磁気回路における磁束の流れにくさ(=磁気抵抗)を表しています。つまり、電気回路でいうところの電気抵抗に対応するものです。リラクタンストルクをうまく利用できれば、磁気抵抗が最小化され、同期モータの効率的な回転が実現します。

一方、コギングとは、電機子の位置や形状と回転子の磁束分布が相互に影響することによって、モータがガクガクと細かく脈動する現象のことです。よって、コギングトルクはリラクタンストルクと違って不都合なトルクであり、これを低減することが重要となります。

以上を踏まえて問題文を確認すると、( エ )は固定子と回転子の鉄心(電磁鋼板)との間に働く回転力に関する言葉が入るので、( エ )は「リラクタンス」となります。

( オ )について、リラクタンストルクのみを利用したモータは、永久磁石を使わない分、材料コストが低くなります。よって、( オ )には「低い」を入れるのが妥当であると判断できます。

以上から、( ア )は「と同じ速度」、( イ )は「埋込」、( ウ )は「表面」、( エ )は「リラクタンス」、( オ )は「低い」となるので、正解は(4)です。

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