問 題
次の文章は、三相同期電動機の位相特性に関する記述である。
図は三相同期電動機の位相特性曲線(V曲線)の一例である。同期電動機は、界磁電流を変えると、電機子電流の端子電圧に対する位相が変わり、さらに、電機子電流の大きさも変わる。
図の曲線の最低点は力率が1となる点で、図の破線より右側は( ア )電流、左側は( イ )電流の範囲となる。また、電動機の出力を大きくするにつれて、曲線は( ウ )→ B →( エ )の順に変化する。
この位相特性を利用して、三相同期電動機を需要家機器と並列に接続して無負荷運転し、需要家機器の端子電圧を調整することができる。このような目的で用いる三相同期電動機を( オ )という。
上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- (ア) (イ) (ウ) (エ) (オ)
- 遅れ 進み A C 静止形無効電力補償装置
- 遅れ 進み C A 静止形無効電力補償装置
- 遅れ 進み A C 同期調相機
- 進み 遅れ C A 同期調相機
- 進み 遅れ A C 同期調相機
解 説
同期電動機において重要な特性曲線は、問題文にもある通り「V曲線」と呼ばれていて、その軌跡は次のようになります。
V曲線は、電圧一定の電源に接続した出力一定の同期電動機に対する、界磁電流と電機子電流の関係を表しています。
界磁電流を徐々に減少(または増加)させると、上図のように電機子電流は初めのうちは下がっていき、途中からは一転して上がります。結果的にV字のような軌跡を描くことから、同期電動機の特性曲線であるこのグラフはV曲線と呼ばれています。
また、同期電動機では、界磁電流を増減することによって入力電力の力率を変えることができます。出力が一定の同期電動機は、界磁電流を減らしていくと(横軸右端から中央に寄せていくと)V曲線に沿って電機子電流が減少していき、力率1のときに電機子電流が最小になります。
そして、界磁電流が大きいとき(グラフの右側)は逆起電力が大きくなるために進み力率となり、反対に界磁電流が小さい(グラフの左側)と遅れ力率となります。よって、( ア )には「進み」を、( イ )には「遅れ」を入れるのが適切です。
さらに、同期電動機の負荷を大きくすると、その分、界磁電流や電機子電流も大きくなります。よって、負荷が大きいと上図のV曲線はV字のままグラフの上側に移動することになります。反対に、小さい負荷のときは、V曲線が下のほうに移動します。
ただし、どのような条件でも力率1のときがそのV曲線において最小の電機子電流の値となり、その力率1の点を集めたものが、上図の点線で示した軌跡です。
つまり、負荷を上げればV曲線は上方向に移動し、負荷を下げればV曲線は下方向に移動することになります。よって、( ウ )は「C」、( エ )は「A」となります。
最後の( オ )について、選択肢には「静止形無効電力補償装置」と「同期調相機」があります。
静止型無効電力補償装置は、パワーエレクトロニクスを用いることで、高速で連続的に無効電力を調整できる最新型の調相設備です。
一方、同期調相機とは、無負荷の同期電動機のことです。同期電動機を無負荷運転し、励磁電流を加減することで進みor遅れ電流を流しています。つまり、進み無効電力と遅れ無効電力のどちらの調整もできる調相設備です。
よって、( オ )には「同期調相機」が入ると判断できます。
以上から、( ア )は「進み」、( イ )は「遅れ」、( ウ )は「C」、( エ )は「A」、( オ )は「同期調相機」となるので、正解は(4)です。
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