電験三種 R4年度下期 機械 問1 問題と解説

 問 題     

直流機の構造に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. 直流機は固定子と回転子からなる。界磁は固定子にあり、電機子及び整流子は回転子にある。
  2. 電機子鉄心には、交番磁束による渦電流損を少なくするため、電磁鋼板を層状に重ねた積層鉄心が用いられる。
  3. 直流発電機には他励式と自励式がある。他励式には、分巻発電機、直巻発電機などがある。
  4. 電機子電流による起磁力がエアギャップの磁束分布に影響を与える作用を電機子反作用といい、この影響を防ぐために補償巻線や補極が用いられる。
  5. 直流電動機に生じる電機子反作用の向きは発電機の場合とは反対であるが、電機子電流の向きが反対であるので補償巻線や補極の接続方法は発電機の場合と同じでよい。

 

 

 

 

 

正解 (3)

 解 説    

(1)は正しいです。直流機は、固定子と回転子で構成されます。それぞれ名前の通り、動かないで固定している部品と、回転する部品ということになりますが、固定子には界磁や継鉄などがあり、回転子には電機子や整流子などがあります。

(2)も正しいです。電機子は、界磁がつくった磁束を切るように回転する部分で、電機子鉄心と電機子巻線から構成されます。このうち電機子鉄心は、交番磁束による渦電流損を少なくするため、積層鉄心が用いられます。

余談ですが、電機子巻線は六角形(亀甲形)の形状をしていて、そのコイル辺を電機子鉄心のスロットに挿入します。各コイル相互のつなぎ方には、同じスロットにコイル辺を重ねる重ね巻と、波のようにつなぐ波巻とがあります。

(3)が誤りです。直流発電機には大きく分けて、他励発電機と自励発電機とがあります。

他励発電機というのは、界磁電流を直流発電機とは別の場所からとってくるタイプの発電機です。

一方、自励発電機は、それ自身から界磁電流を作ることのできるタイプの発電機のことを指します。自励発電機は界磁巻線と電機子巻線のつなげ方によって、さらに分巻発電機、直巻発電機、複巻発電機に分類できます。

よって、(3)の後半の「他励式には~」という部分が誤りで、これを「自励式には~」に直せば正しい文章となります。

(4)は正しいです。直流機の電機子反作用とは、電機子電流による起磁力がエアギャップの磁束分布に影響を与える作用のことで、この影響を防ぐためには次のような方法があります。

  • 補極を設けてエアギャップの磁束分布の偏りを補正する方法
  • 補償巻線を使って電機子電流と反対向きの電流を流し、磁束を打ち消す方法

(5)も正しいです。直流電動機と直流発電機とは、電機子反作用の向きも電機子電流の向きも反対です。そのため、補償巻線や補極の接続方法は両者の間で反対の反対の関係になるので、結果として同じ接続方法とするのが正しいです。

以上から、正解は(3)となります。

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